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「腹持ちがよい」食べものとは? 食欲のしくみや満腹感を得る食べ方も紹介

「腹持ちがよい」食べものとは? 食欲のしくみや満腹感を得る食べ方も紹介

急に空腹を感じて 「さっき、しっかり食べたはずなのに……」と怪訝に思うことはないでしょうか? だからといって、空腹をまぎらわすために油脂分の多いスナック菓子をつまんだり、砂糖たっぷりの菓子パンを頬張ったりするのは、体にとってよいことではありませんよね。そこで今回は、食欲のメカニズムと満腹感が得られる食べ方、腹持ちがよいといわれる食べものなどを考えていきます。

 

  1. 食欲を感じるしくみ
  2. 満腹感を得やすい食べ方
  3. 腹持ちがよい食べものとは?
  4. 腹持ちがよい食べものの例
  5. 腹持ちがよい食べものQ&A
  6. 大切なのはゆっくりよく噛んで味わうこと

 

食欲を感じるしくみ

私たちの体のなかでは、意識しなくてもさまざまな機能が自動的に働いて維持されています。「喉が渇いた」と感じて水を飲むのは、体内の水分が足りなくなったことを察して行動を促すメカニズムが働くからです。体温がある程度一定なのも、そして「お腹がへったから何か食べよう」と食欲が湧くのも同じこと。これらは恒常性を保つ体内の機能のおかげです。
食欲や睡眠などを制御しているのは、大脳の深いところにある「視床下部」です。視床下部は、自律神経やホルモンを分泌する内分泌系などをコントロールする大切な役割をつかさどっています。視床下部には、食欲を抑える「摂食中枢」と「満腹中枢」があり、摂食中枢が働くと食欲が湧き、満腹中枢が働くと食欲がおさまります。両方を合わせて「食欲中枢」とも呼ばれています。これらに、脂肪細胞から分泌される「レプチン」をはじめとするさまざまなホルモンの働きによって、体内では複雑で精密な食欲の制御が行なわれているのです。

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満腹感を得やすい食べ方

食事をして「お腹いっぱいだ」と満腹感を覚える過程には、満腹中枢が関係しています。満腹中枢は、食べることで体内にエネルギーが補給されると血糖値が上昇して刺激を受け、それによって食欲を抑制するとされています。
満腹感を得やすくなる方法がいくつかありますので、ご紹介しますね。ぜひ取り入れてみてください。

ゆっくり食べる

時間をかけて食べることで、血糖値の上昇を脳が感知するため、食べすぎを抑えることができます。早食いの人ほど肥満度が高いという報告があるそうです。早く食べると血糖値の上昇を満腹中枢が感じるのが遅くなって、その結果食べすぎてしまうことが原因といわれています。ゆっくり食べられる料理のレシピを考えてもよさそうです。

よく噛んで食べる

食べものを一口ずつよく噛むと、咀嚼に関係する筋肉「咀嚼筋」が働いて脳幹に伝わります。すると視床下部から化学物質「ヒスタミン」が分泌されて食欲を抑えるため、満腹感が得られやすいのです。また、よく噛むと脳内物質の働きによって内臓脂肪の分解を促すともいわれています。さらに、噛むことによって脳を活性化させたり、唾液の分泌が増えるので体内で消化しやすくなるといった副次的効果もあるそうです。

水分を十分摂る

食事の30分前に500ml程度の水を飲むとよいとされています。それは水でお腹を満たすという意味ではなく、血糖値が急激に上昇することを抑えることが目的。血糖値が急上昇してから急下降すると、空腹感が増すのだそうです。それを防ぐため、食前に水を飲むことが推奨されています。
水分を摂ることによって、食欲を増進させる働きがあるホルモン「グレリン」の分泌が減るそうです。つまり、空腹ホルモンともいわれるグレリンが減ると食欲も抑えられるというわけです。

楽しみながら食べる

食事は本来楽しいものです。野生動物はエサをとらなければならないため、規則正しく食事は望むべくもありませんが、人間だけは別で1日3食しっかり摂ることができます。食欲を満たす行動にはエネルギーを補うことに加えて、報酬としての満足感もあるそうです。おいしいと感じながら楽しんで食べることで満腹中枢も満たされ、必要以上にカロリーを摂らなくてもよくなるようです。

「ながら食い」はNG

パソコンに向き合いながら食べたり、スマホをいじりながら食事をする「ながら食い」はやめた方がよいといわれています。ゆっくり、よく噛んで、楽しみながら食べることは満腹感を得やすいからです。食事中はテレビを見たり新聞を読んだりすることもできるだけ我慢したいものです。

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腹持ちがよい食べものとは?

「●●は腹持ちがいいよね」「●●は腹持ちがイマイチだよ」などと言うときの「腹持ち(腹持)」とはいったいなんでしょうか?
辞書をひくと「食物の消化が遅く、なかなか腹が減らないこと」「腹のぐあい」「食べたものの消化が遅くて、腹の中に長い間たまっていること」「腹がなかなかすかないこと」などが出てきます。科学的な定義はないようですが、ニュアンスは伝わってきますよね。
ここでは腹持ちがよい食べものを「食物の消化が遅く、なかなか腹が減らない食べもの」とします。主に「たんぱく質が豊富」「食物繊維が豊か」「ほどよい脂質」などの条件を満たした食べものが候補となります。
また、「GI値が低い食べもの」よいとされています。GIとはグリセミック・インデックスの略で、GI値は糖質50gを含む食品を摂った際の血糖値の上昇度を示す指数のこと。GI値が高い食材を食べると血糖値は上昇が激しく、逆にGI値が低ければ血糖値は緩やかに上昇します。GI値が低くて体内への吸収がゆるやかな食べものが、腹持ちのよい食べものといえます。例えば、精米された白米(精白米)よりも玄米の方がGI値は低く、食パンよりも全粒粉パンの方がGI値が低いです。これは食物繊維を多く含むためだそうです。

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腹持ちがよい食べものの例

ここからは、先ほど挙げた「たんぱく質が豊富」「食物繊維が豊か」「ほどよい脂質」「GI値が低い食べもの」という条件に当てはまる食材を、分類別に見ていきましょう。

穀物類:玄米、雑穀米、全粒粉パン、オートミールなど

玄米は精白米よりも腹持ちがよいとされています。それは、玄米はぬかや胚芽を取り除いていないから。さらに玄米は白米よりも消化されにくいため、しっかり噛んで食べることも満腹感が得やすいポイントです。ひえやあわなどを用いた雑穀米も、腹持ちがよいとされています。
パンに目を転じると、小麦を丸ごと挽いて粉にした「全粒粉」のパンが挙げられます。通常のパンに用いられる小麦粉は胚芽や表皮を取り除きますが、全粒粉はこれらを除去しないため食物繊維などが豊富です。精白米に対する玄米と同じようなイメージですね。
また、オーツ麦を脱穀したオートミールも腹持ちがよいとされています。オートミールはGI値が低く、胚芽などを残しているため食物繊維も豊富です。

豆類:大豆、豆腐、納豆など

良質なたんぱく質をはじめ、脂質やビタミン、ミネラルをバランスよく含む大豆は「畑の肉」と称されています。この大豆を用いた豆腐や納豆なども見逃せません。
豆腐はさまざまな食材と組み合わせられるうえ、低カロリーながら栄養価が高いため、あらゆる料理に使われています。水分を多く含んでいるので、腹持ちがよい食べものの一つです。
蒸した大豆を加工する納豆は、発酵させることで大豆が含んでいない栄養素をもっています。

いも類:さつまいも、じゃがいもなど

炭水化物を主成分とするさつまいもとじゃがいもは、でんぷんが多いため満腹感が得られやすく、腹持ちがよいとされています。
また、ビタミンCは加熱すると壊れてしまいますが、さつまいも、じゃがいもが含むビタミンCはでんぷんに守られているため壊れにくいという特徴もあります。

野菜類:キャベツ、ごぼう、れんこんなど

キャベツやレタスなどの葉物野菜を生で食べるのはおすすめです。栄養素が豊富なのはもちろんですが、生の野菜をサラダで食べると歯ごたえが楽しめますし、しかもよく噛んで食べるため満腹中枢を刺激します。特にキャベツは胃酸の分泌を抑えるビタミンU(キャベジン)を含んでいるうえ、入手しやすい野菜なのもうれしいです。
ごぼうやれんこんなど食物繊維が豊富で、歯ごたえのある野菜も見逃せません。食物繊維は水に溶けやすい水溶性、水に溶けにくい不溶性に大別できますが、ごぼうは水溶性、不溶性ともに同じくらい含んでいます。れんこんはぬめり成分を有しているため、胃腸の調子を整える働きも期待できます。

肉類・魚介類:鶏むね肉、鶏ささみ、青魚など

たんぱく源となる肉類では、たんぱく質が多いのに脂質は少ない鶏のむね肉と鶏のささみがよいといわれています。鶏のむね肉は皮なしを選ぶ、もしくは皮を取り除くとより低カロリーになります。鶏肉は肉類のなかでも消化・吸収されやすいのも特徴です。
魚介類では、いわし類やさんま、さば類、あじ類などの青魚(体が青緑色を帯びた魚)がよいとされています。植物や魚の脂には、人間が体内で合成できない必須脂肪酸を含む不飽和脂肪酸を有しています。青魚は不飽和脂肪酸のDHAとEPAが豊富なうえ、良質なたんぱく質を含んでいますから、積極的に摂りたいですね。

乳製品:ヨーグルト、チーズなど

牛乳やチーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品は、血糖値の上昇がゆるやかになるGI値が低い食べものに分類されています。
牛乳を乳酸菌で発酵させたヨーグルトは、たんぱく質やカリウムを豊富に含んでいます。また、乳酸菌によって牛乳よりも消化や吸収が優れているほか、よく知られているように腸内環境を整える働きがあるのもうれしいポイントです。
チーズもたんぱく質、脂質、カルシウムを含んでいます。ただし、食物繊維は含んでいないため、野菜などと一緒に食べることが推奨されています。

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腹持ちがよい食べものQ&A

Q)満腹感を得るにはどれくらい食事に時間をかければいいの?

A)食事をスタートしてから15分~20分経つと、満腹中枢にシグナルが送られるといわれています。ですので、パパっと食べ終えるのではなく、なるべくしっかり時間をかけてゆっくり食事をするようにしてください。

 

Q)よく噛んで食べるにはどうしたらいいですか?

A)食材や料理を「噛みごたえのあるものに置き換える」とよいでしょう。日本人は戦前まで咀嚼階数が多かったそうです。その頃は、麦などの雑穀、根菜類、高野豆腐などの保存食をよく食べていたからです。いずれもしっかり噛まないと食べにくいものですよね。精白米を玄米に置き換えるとよく噛むことになりますし、また食物繊維やビタミン、ミネラルなど栄養素の点からも理にかなっているといえます。

 

Q)GI値の低い食べものだけを選ぶのは難しいです。どうしたらいいですか?

A)たしかにGI値の低い食べものばかりというわけにはいきませんね。そのときは、食物繊維を含む食べものを同時に摂るようにしてください。また、食物繊維が豊富な野菜たっぷりのサラダを用意して、先に食べるという手もありますよ。

 

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大切なのはゆっくりよく噛んで味わうこと

腹持ちのよい食べもの、いかがでしたか? 食欲一つとっても私たちの体内にはさまざまなメカニズムがあり、それらの働きで常に一定のレベルに維持されていることがわかりました。腹持ちのよい食べものを考えた場合、食材の選び方はもちろんのこと、基本的にはゆっくりよく噛んで食べるのがよいということです。また、食物繊維を意識しつつ、さまざまな栄養素を摂ることも重要なんですね。
皆さん日々忙しいと思いますが、何か別のことをしながら食べるのではなく、食事のときは食材一つひとつをしっかり味わいながら時間をかけて、楽しみながら食べるようにしましょう。

 

 

 

 

 

<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書物等の一覧>

【A】櫻井武著『食欲の科学――食べるだけでは満たされない絶妙で皮肉なしくみ』(講談社 2012)

【B】一般社団法人 日本内分泌学会Web「ホルモンについて」

【C】一般社団法人 日本健康倶楽部Web「健康用語辞典/満腹中枢」

【D】大学共同利用機関法人自然科学研究機構 基礎生物学研究所プレスリリース「肥満をつかさどる脳内メカニズムを発見」(2017.09.14)

【E】農林水産省Web「ゆっくりよく噛んで食べていますか?」

【F】農林水産省Web「みんなの食育/中高年男性編」

【G】横山医院Web「食欲のメカニズムの理解と食欲を上手にコントロールする方法」

【H】医療法人心豊会はせがわクリニックWeb「グレリン(空腹ホルモン)」

【I】飯田薫子・寺田あい監修『一生役立つ きちんとわかる栄養学』(西東社 2019)

【J】神戸製菓専門学校Web「全粒粉って何?特徴や栄養素、小麦粉との違いとは」

【K】全国健康保険協会Web「オートミールってどんな食品?」

【L】JA北新潟Web「ご飯と満腹感」

【M】飯田薫子監修『70歳からの本当の健康を手に入れる すごい栄養学』(宝島社 2025)

【N】厚生労働省健康づくりサポートネット「記事・用語辞典メニュー/不飽和脂肪酸」

【O】山梨県厚生連健康管理センターWeb「『食品のGI値』を活用し、健康な体をつくりましょう!」

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