「黒豆」は色違いの大豆? 特有な栄養素やレシピを紹介!

コロンと丸くてかわいらしい「黒豆」。おせち料理に欠かせない豆ですよね。黒豆の正式名称は「黒大豆」。そう、実は黒豆は大豆なんです。ただし、黒大豆は大豆にはない特有のポリフェノールも含んでいます。今回は栄養素やレシピも含めて黒豆をご紹介します。
【A】
黒豆ってどんな豆?
もしも料理事典や野菜図鑑の目次で「黒豆」を探そうとしても、その名はきっと見つからないでしょう。先にお伝えしたように、黒豆は大豆の仲間だからです。大豆のページに黒豆も載っています。
節分の豆まきなどでよく使われる大豆は種の皮が黄色っぽいですよね。だから「黄大豆」とも呼ばれています。そして黒豆はその名の通り黒いので「黒大豆」。このほか、きな粉などに用いられる緑がかった「青大豆」もあります。いずれも植物分類学上はマメ科のダイズ属です。
一つ付け加えると、庶民的な居酒屋でお通しによく使われる「枝豆」は、大豆が熟す前に収穫したもの。つまり。大豆を早採りすると枝豆で、完熟してから収穫すると大豆というわけです。市場にはあまり出回りませんが、「黒豆の枝豆」もあるそうですよ。
【B】【C】
おせち料理に黒豆が用いられたのはいつ?
ちょっと豪華なおせち料理や懐石料理などで金粉を散らした黒豆を見ることがあるように、黒豆は煮豆によく使われています。
黒豆がおせち料理に使われるようになったのは、室町時代まで遡るといわれています。当時は砂糖が貴重だったため、黒豆とこんにゃくを一緒に炊いて「座禅豆」として食べられていたことが、その起源という説があります。
そもそも大豆自体が「畑の肉」といわれるほど栄養豊富です。大豆は良質なたんぱく質、そしてビタミンB群が豊かで、カリウムなどのミネラル類も多く含んでいます。黒豆特有のポリフェノールもあるため、しっかり摂るようにしたいですね。
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栽培されている黒豆の品種
黒豆で有名なのは、やはり「丹波の黒豆」で知られる「丹波黒(たんばぐろ)」でしょう。丹波黒は、京都府と兵庫県にまたがる丹波地方の特産品として、その知名度は抜群です。そのほかにもさまざまな品種が各地にありますので、いくつかご紹介します。
丹波黒(たんばぐろ)
実は「丹波黒」という品種はなく、在来黒大豆系統の総称なのだそうです。ちょっと意外でした。そのうち「兵系黒3号」は、その在来黒大豆系統から生まれた一般品種。世界最大級といわれるほど大粒で、特に煮物に向いています。
いわいくろ
北海道は豆類の栽培が盛んで、黒豆もさまざまな品種を育てています。北海道立中央農業試験場が1998年に育成した「いわいくろ」は、大粒で品質もよく、煮豆の加工に適した品種。2020年には2820haという広大な面積で栽培されています。
黒丸くん
東北地方など年平均気温9~12℃の寒冷地で育てるのに向いている黒大豆です。倒れにくく、収穫量も多い品種で、煮豆に適しているほか、甘みがあるため寄せ豆腐や豆乳飲料などにも利用可能だそうです。
クロダマル
四国や九州など年平均気温15~18℃の暖地(だんち)に適した黒大豆として初めて育成された品種です。主に九州で栽培されていて、豆腐や煮豆のほか、枝豆にしても美味とされています。
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黒豆に含まれる栄養素
黒豆は、他の大豆にはない特有のポリフェノールを有しているほか、大豆に比べてビタミンKの含有量も多いです。そのほかは大豆と同じで、たんぱく質やミネラル、食物繊維が豊富です。黒豆に含まれる代表的な栄養素を見てみましょう。
ポリフェノール
大豆にはないけれど、黒豆は含んでいるポリフェノールの代表格が「アントシアニン」です。アントシアニンは色素成分で、赤ワインやブルーベリーが含んでいることでも知られています。ポリフェノールは植物が有する苦みや色素の成分で、抗酸化作用をもつとされます。
イソフラボン
イソフラボンは大豆に多く含まれている成分として知られていて、もちろん黒豆も大豆と同じように豊富に含んでいます。イソフラボンはポリフェノールの一種で、近年は機能性成分として注目が高まっています。
たんぱく質
体のなかでエネルギー源となったり、体の組織をつくる主成分がたんぱく質です。豆類は良質なたんぱく質を有していますが、そのなかでも大豆は特に含有量が多いため、「畑の肉」といわれているのです。
食物繊維
黒豆は食物繊維を多く含んでいて、それはほとんどが不溶性食物繊維です。不溶性食物繊維は水に溶けにくく、体内で水分を吸収し腸の活動を促すという大事な役割を担っています。
ビタミンB1
糖質を摂取して、そこからエネルギーを生み出す際に重要な役割を担うビタミンB1。黒豆はこれも豊富です。ビタミンB1は脚気(かっけ)を予防する成分として発見されたそうです。日本人はビタミンB1が不足しがちなので、黒豆をこまめに摂りたいですね。
ビタミンK
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によると、黒豆は大豆(黄大豆)に比べて2倍のビタミンKを含んでいます。ビタミンKは血液を凝固する物質が肝臓でつくられるときに必要な成分です。可食部100gあたりのビタミンKは大豆(乾)が18μg、黒豆(乾)が36μg。この傾向はゆでた状態でも同じで、大豆(ゆで)が7μgに対して黒豆(ゆで)が15μgです。
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黒豆は1日に何粒まで食べていい?
先ほどご紹介したイソフラボンは「大豆イソフラボン」と呼ばれ、その化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)に似ていることから、大豆や大豆を用いた食品を摂りすぎると何か影響があるのではないか、との声があったそうです。そこで、大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値(70~75mg/日)、そして特定保健用食品として摂取する場合の上限値(30mg/日)が定められました。
ただし、妊婦や妊娠の可能性のある人、胎子や乳幼児、小児については、通常の食事以外で大豆イソフラボンを摂取することは避けた方がよいとなりました。
ですので、1日に何粒といった制限はありませんが、常軌を逸した食べ方はやめた方がよいでしょう。
【K】【L】
黒豆を摂取する際のおすすめレシピ
黒豆の煮豆はほんとうにおいしいですが、たまには別の食べ方も試してみたいですよね? いくつかレシピをご紹介しますので、ぜひご自宅でチャレンジしてください!
レシピ1:
黒豆の煮豆
材料(4人分):
黒豆(乾):200g
〈調味料〉
砂糖:180g
ミツカン ほんてり:大さじ3と1/2
しょうゆ:大さじ5
水:5カップ
作り方:
1. 黒豆は洗って、厚手の深鍋に水を入れ、一晩おいておく
2. 1を火にかけ、沸騰したら泡をすくいながら弱火にし、差し水(分量外)をする
3. 2に落としぶたをし、3~4時間弱火で煮る
4. 豆が柔らかくなったら〈調味料〉を加えてさらに2~3時間煮る。この時、液面から黒豆がでない(空気にふれない)ようにする
レシピ2:
サーモンとチーズの黒豆ちらし寿司
材料(4人分):
米:3合
黒豆(乾):30g
<A>
ミツカン 穀物酢:大さじ4と1/2
砂糖:大さじ3~4.5
塩:小さじ1と1/2
<B>
ミツカン 穀物酢:小さじ4
砂糖:小さじ4
塩:小さじ1/2
<C>
溶き卵:2個分
牛乳:大さじ2
マヨネーズ:小さじ2
みりん:小さじ1
塩:少々
サーモン(刺身用):100g
アボカド:1/2個
スライスチーズ:2枚
ブロッコリースプラウト:適量
作り方:
1. 耐熱容器に黒豆、水(1/2カップ)を入れ、電子レンジ(600W)で2分30秒ほど加熱する。<A>は混ぜ合わせる
2. 炊飯器に洗った米と1の黒豆を汁ごと入れ、3合の目盛りまで水を入れて炊く
3. 炊き上がったら<A>を回しかけ、手早く切り混ぜる(黒豆酢めし)
4. サーモンは1cmの角切りにする。スライスチーズは好みの型で抜く。ボウルに<B>を合わせる
5. 耐熱容器に<C>を入れ混ぜ、電子レンジ(600W)で2分ほど加熱する。取り出して泡立て器で混ぜ、再度電子レンジ(600W)で1分ほど加熱し、泡立て器で混ぜて細かくする。生の部分がある場合は、追加で電子レンジ加熱する(600W/約20秒~)
6. <B>にサーモン、アボカドを入れ、軽くあえる
7. 器に黒豆酢めしを盛り付け、5、水けをきった6、4のスライスチーズをのせ、ブロッコリースプラウトを飾る
レシピ3:
黒豆と小えびの八方ジュレ
材料(4人分):
えび(ゆで):4尾
黒豆(煮豆):適量
粉かんてん:2g
ミツカン 八方だし:大さじ2
水:1と1/4カップ
作り方:
1. 水、粉かんてんを鍋に入れ、中火にかける。かんてんが底に沈みやすいので、鍋底を混ぜながら煮る。煮立ったら静かに煮立つ程度の火加減にして、2分ほど煮る。「八方だし」を加えてよく混ぜ、バットに移して冷やし固める。固まったらざるでこし、器に盛り付ける
2. 1にえびと黒豆を飾る
※冷やす時間は、調理時間に含みません
黒豆をもっと食べよう!
豆腐や納豆はもちろんのこと、味噌や醤油といった私たちの暮らしに欠かせない調味料に至るまで、さまざまな食品・調味料に用いられている大豆。そのなかでも黒豆は大豆にはない栄養素や成分を有しているので、ふだんからもっと食べる機会を増やしたいですね。
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<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書物等の一覧>
【A】池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』(NHK出版 2018)
【D】京都府南丹広域振興局Web「おいしい黒大豆を食べよう!」
【F】農林水産省Web「国産大豆の品種特性~加工適性と栽培特性~」
【H】『旬の野菜の栄養事典――春夏秋冬おいしいクスリ』(エクスナレッジ 2016)
【I】公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット」
【J】五関正江監修『ビタミン・ミネラルがよくわかる本――上手にとって健康に!』(つちや書店 2023)