根も葉も栄養たっぷり! 万能野菜「大根」を徹底解剖
「大根」は私たち日本人に馴染み深い野菜ですが、実は地中海沿岸が原産地。日本には奈良時代、平安時代に渡ってきたといわれ、春の七草の一つで「すずしろ」とも呼ばれています。古くから栽培されていたため、漬物や煮物、生食など用途に応じてさまざまな品種があり、また各地の気候風土に適した在来種もあります。今もっとも多く生産されている野菜といわれる大根は、どのような栄養素をもっているのでしょうか?
今の主流は「青首大根」

大根はさまざまな品種があるため、それらを組み合わせると一年中収穫することができます(寒冷地を除く)。また、同じ畝で毎年育てても連作障害が出にくいため、生産者にとって育てやすい作物でもあります。
大根は形や色、味などによってさまざまな品種がありますが、いま流通しているほとんどの大根は「青首系」と呼ばれるものです。これは愛知県発祥の伝統野菜「宮重大根」をベースに品種改良されたもの。伝統野菜として知られる練馬大根や三浦大根は「白首系」です。
煮ても焼いても、大根おろしとして生で食べてもいいし、漬物にもなる大根は、まさに万能野菜。根に栄養があるのはもちろんですが、葉も栄養素を多く含んでいるので、できれば葉つき大根を買って1本丸ごと味わうとメリットも大きいです。
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大根の栄養素とは?

可食部100g当たりのエネルギーが15kcalの大根は、まさに低カロリーな野菜です。根にはカリウムや鉄などのミネラル、そしてビタミンB群や葉酸を多く含んでいます。また、葉にもβ-カロテンや葉酸、ビタミンCが豊富です。根と葉の主な栄養素を表にまとめたので、その違いもつかんで調理してください。
[表] だいこんの主な栄養素(可食部100gあたり)
| 食品名 | エネルギー | 水分 | 食物繊維 総量 |
カリウム | カルシウム | 鉄 | β-カロテン 当量 |
ビタミンB1 | ビタミンB2 | 葉酸 | パントテン酸 | ビタミンC | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| kcal | g | g | mg | mg | mg | μg | mg | mg | μg | mg | mg | ||
| だいこん 根 皮つき ゆで | 15 | 94.4 | 1.6 | 210 | 24 | 0.2 | 0 | 0.02 | 0.01 | 38 | 0.10 | 9 | 根端および葉柄基部を除いたもの |
| だいこん 葉 ゆで | 24 | 91.3 | 3.6 | 180 | 220 | 2.2 | 4400 | 0.01 | 0.06 | 54 | 0.11 | 21 | 葉柄基部を除いたもの ゆでたあと水冷し、手搾りしたもの |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(食物繊維はプロスキー変法またはAOAC.2011.25法)
大根の栄養素1「ジアスターゼ」
大根が含む特徴的な栄養素として真っ先にその名が上がるジアスターゼ(アミラーゼ)。大根の根には消化を促す消化酵素がいくつも含まれていて、ジアスターゼもその一つです。ジアスターゼはでんぷんを分解し、胃もたれや胸やけ、二日酔いを予防する効果があるといわれています。そのほかにもたんぱく質を分解するプロテアーゼ、脂質を分解するリパーゼといった酵素も大根の根には含まれています。
大根の栄養素2「ビタミンC」
根にも葉にも含まれているのがビタミンCです。ビタミンCはコラーゲンをつくり出すために必ず必要な成分で、体内で不足すると血管がもろくなる可能性があります。また、鉄の吸収を助けるため、貧血を予防するにも有効といわれています。毛細血管や軟骨、歯などを正常に保つほか、皮膚のしみを防いだり、ストレスや風邪などへの抵抗力を強めたりする働きもビタミンCにあるそうです。
大根の栄養素3「パントテン酸」
パントテン酸はエネルギーの代謝にかかわるほか、コレステロールやホルモンの合成に携わるといわれています。ビタミンB群の一つで、以前はビタミンB5と呼ばれていたこともあります。パントテン酸が体内に吸収されるとコエンザイムAという補酵素の成分になります。仮にパントテン酸を摂取しすぎたとしても、尿として排出されるので過剰摂取の心配はないそうです。
大根の栄養素4「葉酸」
大根は葉酸も含んでいます。葉酸は赤血球の合成にかかわるほか、皮膚や粘膜の働きを正常に保つ役割があります。赤血球の寿命は短いためつくり続けなければならないのですが、葉酸はそれに携わっています。また、細胞の遺伝情報であるDNAの合成や代謝にかかわる酵素を助ける働きもあります。
大根の栄養素5「カリウム」
根にも葉にも一定量含まれているのがカリウムです。カリウムは、ナトリウムとバランスをとり、細胞のなかの体液の量や浸透圧を調整する働きがあります。また、筋肉の収縮や弛緩にかかわるほか、高血圧症や脳卒中を予防する働きがあるとされています。
大根の栄養素6「食物繊維」
食物繊維は近年とても注目されている栄養素です。炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルという五大栄養素と並んで重要と見なされ、食物繊維は「第六の栄養素」とも呼ばれています。食物繊維の効用として、便秘の予防をはじめ、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下などが挙げられます。日本人はかつて穀類やいも類、豆類から食物繊維を摂っていましたが、食生活が変化したことでその摂取量は減少傾向に……。大根などの野菜類もしっかり食べて、食物繊維の摂取量を増やしたいですね。
大根の栄養素7「β-カロテン」
大根の葉に多く含まれるのがβ-カロテンです。大根は、根の部分は淡色野菜で、葉の部分は緑黄色野菜と見なすことができます。葉つきの大根を購入したら、ぜひ葉を捨てずに調理しましょう。野菜や果物に含まれるβ-カロテンには、抗酸化作用があるほか、動脈硬化を防ぐ働きがあるとされています。
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栄養を取りこぼさない大根の食べ方

大根は、根の部分は淡色野菜、葉の部分は緑黄色野菜と見なすことができるとお伝えしましたが、大根は長いため部位によって少しずつ味や硬さが変わるという性質があります。その点も踏まえて、栄養を取りこぼさない大根の調理ポイントをまとめたので、食べ方の参考にしてください。
食べ方1「部位によって調理を変える」
大根の根は、先端に近い部分ほど辛みが強くなります。そこで先端部は大根おろしや漬物に向いているのです。葉に近い部分は逆に甘みが強く、さらに硬いため、サラダや炒めものに最適です。根の中央部分は柔らかくてみずみずしいことが多いので、ふろふき大根やおでんの具など、煮て食べる調理によいといわれています。
食べ方2「生で食べる」
大根が含むでんぷん分解酵素のジアスターゼは熱に弱いので、サラダや大根おろしなど生で食べるのがおすすめです。空気に触れると酸化するため、できれば調理してすぐ食べた方が栄養素を取りこぼさなくて済みますよ。
食べ方3「皮も料理する」
大根の皮には根の中心部よりも少し多く栄養が含まれています。食物繊維やビタミンC、ポリフェノールなどがそれです。煮る料理の場合、皮をむくことが多いと思いますが、できれば皮も捨てずに利用したいものです。例えば、皮を細切りにしてきんぴらに用いる、皮を揚げ物にするといった調理も試してみてください。
食べ方4「干して保存」
例えば親戚や友人に大根を数本もらったら、一度にはとても食べきれませんよね。そんなときは干して保存することをおすすめします。切り干し大根ならすぐに使えますし、便利ですよね。大根を千切りにしてザルに広げて干します。乾きかけたタイミングで手で揉むと甘みが増すといわれています。日あたりがよく、風通しのよい場所があれば1日から3日でできるそうですよ。
食べ方5「葉も食べる」
繰り返しになりますが、大根の葉は緑黄色野菜です。β-カロテンが多く、鉄や葉酸、ビタミンCも含んでいますから、捨てずに活用を。葉を細かく刻んで油で炒めたり、ごまなどと一緒にチャーハンにする手もあります。また、大根の葉を、塩を混ぜた熱湯でゆがいて、水けを絞ってから吊るす、あるいは刻んでざるに広げて天日干ししておけば、みそ汁の具材にもなりますよ。
食べ方6「おでんなら下ゆでを」
冬のおでんといえば大根は欠かせません。ところが、大根をおでんに使う場合、下ゆでした方がよいそうです。ご存じでしたか? 大根にはメチルメルカプタンという硫黄を含んだ化合物があるため、下ゆでしてそれを溶かし出して、あらためて大根をおでんに投入するといいそうです。
食べ方7「すりおろして食べる」
でんぷん分解酵素のジアスターゼは熱に弱く、また根の先端部に多く含まれているので、すりおろして薬味として使うことがよいといわれています。サンマをはじめとする魚の塩焼きに添えると、消化酵素も相まって効果がありそうですよね。
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おすすめ大根レシピ3選
低カロリーで栄養豊富な大根に、鶏肉や豆腐などたんぱく質が同時に摂れるレシピを2つご紹介します。また、大根の葉を有効利用するためのレシピも1つ記載しますので、ぜひお試しを!
レシピ1:
鶏胸肉のしっとりおろし煮

材料(2人分):
鶏むね肉:1枚(300g)
片栗粉:大さじ1
サラダ油:大さじ1
大根:8cm分(約300g)
ミツカン 追いがつおつゆ2倍:大さじ4
小ねぎ(小口切り):適量
作り方:
1. 鶏肉は一口大のそぎ切りにし、ポリ袋に入れて片栗粉をまぶす。大根はおろす
2. フライパンにサラダ油を入れて中火で熱する。鶏肉を両面きつね色になるまで焼く
3. 「追いがつおつゆ2倍」と大根おろしを汁ごと加え、5分ほど、鶏肉に火が通るまで煮る。器に盛り、小ねぎをのせる
レシピ2:
極みだしだから煮物もキマる。実家を思い出すほっこり煮物

材料(4人分):
鶏もも肉:1枚(280g)
大根:10cm(400g)
厚揚げ:大1枚(200g)
スープしゃぶ? 極みだし ストレート:1袋
作り方:
1. 鶏肉は小さめの一口大に切る。大根は皮をむいて、2cm幅の半月切りにする。厚揚げは油抜きをして4等分に切る
2. 鍋に「スープしゃぶ 極みだしST」と大根を入れ、落としぶたをし10分煮る。大根に火が通ったら、鶏肉、油抜きした厚揚げを入れる。鶏肉に火が通るまでに煮る
レシピ3:
大根の葉とじゃこのふりかけ

材料(2人分):
大根の葉:1本分(150g)
ちりめんじゃこ:1/3カップ
赤とうがらし(小口切り):適量
ごま油:大さじ1
ミツカン 追いがつおつゆ2倍:大さじ3
作り方:
1. 大根の葉は1cm幅に切る
2. フライパンにごま油と赤とうがらしを入れて弱めの中火で熱し、香りがでたらちりめんじゃこ、大根の葉の順に加え、強火で炒める。大根の葉がしんなりしたら「追いがつおつゆ2倍」を加えて汁けがなくなるまで炒める
※冷蔵庫に保管し、2~3日を目安にお召し上がりください
根も葉もしっかり味わおう
大根は種を密に蒔いて育てる作物です。発芽して混み合うと数回に分けて間引きをします。その間引き菜がまたおいしくて、生産者や家庭菜園を楽しむ人たちはかなり重宝しているんですよ。
おいしい大根を買うコツは、根の表面に張りとつやがあって、ひげ根が少なく、ずっしり重いものを選ぶこと。根元が黒ずんでなくて、ひび割れしていないことも確認してください。そうそう、葉つき大根を買った場合、必ず葉と根を切り離すように。葉から水分が蒸発してしまうからです。
演技が下手な役者のことを「大根役者」と呼びますが、それは大根を食べてもあたらない(食あたりしない)からという説も。そんな比喩があるほど古くから身近な大根を、ぜひ根も葉もしっかり味わって健康的な日々を過ごしてください。
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<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書物等の一覧>
【B】高橋浩昭著『自然農の野菜づくり』(創森社 2010)
【C】池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』(NHK出版 2018)
【D】吉田企世子監修『旬の野菜の栄養事典――春夏秋冬おいしいクスリ』(エクスナレッジ 2016)
【E】五関正江監修『ビタミン・ミネラルがよくわかる本――上手にとって健康に!』(つちや書店 2023)








