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健康食の代表格「納豆」! 栄養素の宝庫といわれる理由とは?

健康食の代表格「納豆」! 栄養素の宝庫といわれる理由とは?

「体によい食べものを3つ挙げてください」と聞かれたら、「納豆」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。「畑の肉」とも呼ばれる栄養豊富な大豆を加工した食品である納豆は、蒸した大豆に納豆菌を噴霧して発酵させたあと、冷やして熟成させたもの。その味は発酵から熟成までの温度管理が重要といわれています。今回は、大豆のたんぱく質が吸収しやすいうえ、さまざまなミネラルやビタミン、酵素類を併せもつ栄養たっぷりの納豆をご紹介します。

 

  1. 納豆とは何か?
  2. 五大栄養素をすべて含むスーパー食品
  3. 納豆に含まれる機能性成分
  4. 納豆の模範的食べ方とポイント
  5. 納豆に関するQ&A
  6. 体によい納豆を毎日欠かさず適量に

 

納豆とは何か?

縄文時代から食べられていた可能性があるともいわれる納豆。今はスーパーマーケットで手軽に買うことができますよね。冷蔵庫に常備している人も多いと思います。
納豆には大きく2つの種類があります。1つめは、ふだん私たちがよく食べる「糸引き納豆」。そのなかでも、もっともポピュラーなのは大豆を丸ごと煮て発酵させる「丸大豆納豆」で、単に糸引き納豆と呼ぶ際は丸大豆納豆を指す場合が多いです。また、大豆を炒って挽き、表皮を取り除いて煮る「挽きわり納豆」もあります。さらに、その挽きわり納豆に米麹や塩を混ぜて樽に仕込むのが「五斗(ごと)納豆」。これは山形県米沢地方の郷土食です。
2つめは、蒸した大豆に麹菌を付与して、塩水に浸して発酵させ、最後に乾燥させる「塩辛納豆」。寺納豆、浜納豆など地方によって呼び方が変わります。関西では納豆というと糸引き納豆ではなく、塩辛納豆を指すことが多かったそうです。
ここからは、糸引き納豆(丸大豆納豆)を「納豆」と表記し、挽きわり納豆についても時々ふれますね。

【A】【B】【C】

 

 

 

 

五大栄養素をすべて含むスーパー食品

食品に含まれている栄養素を「五大栄養素」と呼びます。たんぱく質、脂質、炭水化物、無機質(ミネラル)、ビタミンの5つを指しますが、納豆には五大栄養素がすべて含まれているのです。さらに、炭水化物は「第六の栄養素」ともいわれる食物繊維を含んでいます。カロリーがあまり高くないうえ、栄養素をバランスよく有した納豆は、まさにスーパー食品といえます。

[表] 納豆類の主な栄養素(可食部100gあたり)

炭水化物
食品名 エネルギー 水分 たんぱく質 脂質 食物繊維
総量
炭水化物 カリウム カルシウム マグネシウム リン 亜鉛 モリブデン ビタミンK ビタミンB1 ビタミンB2 ナイアシン
当量
ビタミンB6 葉酸 パントテン酸 ビオチン
kcal g g g g g mg mg mg mg mg mg mg μg μg mg mg mg mg μg mg μg
糸引き納豆 184 59.5 14.5 10.0 9.5 14.3 690 91 100 220 3.3 1.9 0.60 290 870 0.13 0.30 4.6 0.24 130 3.63 18.2
挽きわり納豆 185 60.9 15.1 10.0 5.9 12.3 700 59 88 250 2.6 1.3 0.43 - 930 0.14 0.36 5.0 0.29 110 4.28 -

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

※たんぱく質は「アミノ酸組成によるたんぱく質」の数値

※脂質のみ文部科学省「食品成分データベース」の数値を使用(七訂[2015年版]のエネルギーの算出方法に基づく成分)

※糸引き納豆の食物繊維はAOAC.2011.25法。挽きわり納豆の食物繊維はプロスキー変法またはAOAC.2011.25法

※ビタミンKはメナキノン-7を含む

※目安:1パック=40g

たんぱく質

納豆は100g当たり14.5gのたんぱく質を含んでいます。たんぱく質は内臓や筋肉、髪、そして爪など私たちの体と命を支えるとても大事な栄養素で、約20種類のアミノ酸が結合したものです。また、たんぱく質は体のさまざまな機能を調節する酵素やホルモンなどにかかわっているため、たんぱく質が不足すると免疫機能が低下したり、筋力が衰えたりといった影響が出ます。大豆由来の納豆をしっかり摂るように心がけたいですね。

脂質

納豆は100g当たり10.0gの脂質を有しています。脂質はエネルギー源として使われます。また、細胞の周りを取り囲む細胞膜の原料ともなります。さらにホルモンの構成に関与するなどの働きも。脂質を摂りすぎると肥満の原因になりますが、逆に摂取量が少ないとエネルギーが足りなくなって疲れやすくなる場合もあります。

炭水化物

納豆は100g当たり14.3gの炭水化物を含んでいます。また、食物繊維総量は9.5gです。挽きわり納豆の数値がどちらも少し低いのは、大豆の表皮を取り除くという製法に起因しているそうです。
炭水化物は、たんぱく質や脂質と同じくエネルギーを生み出す栄養素で、糖質と食物繊維に分けられます。糖質は即効性の高いエネルギー源で、体や脳を動かすために不可欠な栄養素。糖質が不足すると脳や神経に栄養が届かなくなるので、判断力が鈍るなどの悪影響が出ます。食物繊維は、体内で吸収されませんが、腸内細菌のエサになるため腸内環境が整いやすくなる効果が期待できます。

無機質(ミネラル)

納豆は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど多様なミネラルを多く含んでいます。ミネラルは体の構成成分としての役割を担い、また体のさまざまな機能を調節する役目も果たしています。歯や骨の構成成分はカルシウム、リン、マグネシウムですし、鉄はたんぱく質と結合して赤血球の成分となり、モリブデンは大事な酵素の構成成分。体内でミネラルをつくることはできないため、食事で摂取することになります。その点、納豆はミネラルの補給にうってつけの食べものといえます。

ビタミン

納豆は、ビタミンKやビタミンB群、ナイアシン、葉酸、パントテン酸を多く含んでいます。ビタミンは、人間の体内で起きるさまざまな化学反応を円滑にする潤滑油のような存在で、食品から摂取しなくてはなりません。特に納豆が有するビタミンB1とB2、そしてナイアシンはエネルギー代謝にかかわる酵素を助けています。ビオチンはあまり聞き覚えのないビタミンですが、皮膚や粘膜、爪などを正常な状態に保つ成分です。

【D】【E】【F】【G】

 

納豆に含まれる機能性成分

大豆がもつ豊富な栄養素は、発酵させる過程でさまざまな成分も増やします。血液をサラサラにする効果が期待される「ナットウキナーゼ」、腸内環境を整えるといわれる「納豆菌」などはよく知られています。納豆が含む代表的な機能性成分をいくつか紹介しますね。

ナットウキナーゼ

納豆が含む機能性成分のなかで有名なのは、納豆菌がつくる酵素「ナットウキナーゼ」でしょう。ナットウキナーゼには血液をサラサラにする働きがあるとされ、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを予防する効果が期待されます。

大豆イソフラボン

女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするといわれるのが大豆イソフラボンです。そのため、更年期の女性が抱えがちな体の不調を和らげる効果があるとされています。閉経後の女性に多い骨粗しょう症や関節痛などを改善することも期待されています。

ポリアミン

納豆は、アンチエイジング効果があるといわれるポリアミンも含んでいます。ポリアミンには抗炎症作用があり、かつ生活習慣病や老化にかかわる代謝を制御する作用があるといわれています。納豆のポリアミン濃度を上昇させる技術を開発し、それによるポリアミンのアンチエイジング効果を明らかにしようという研究も行なわれています。

サポニン

大豆が有している渋みや苦みは、抗酸化成分のサポニンの影響です。サポニンは脂肪が蓄積することを防ぐとされ、納豆を食べると肥満予防につながることが期待されています。ただし、過剰に摂取すると甲状腺にあまりよくない影響を与える可能性があるので、わかめやひじきなど海藻と一緒に食べることがよいとされています。

レシチン

脳神経や神経組織を構成する細胞膜の主成分がレシチンです。レシチンはアルツハイマー型認知症や動脈硬化の予防に効果があるとされ、また肝臓の機能を高めることも期待されています。大豆レシチンと卵黄レシチンがあり、納豆は大豆レシチンを含みます。大豆レシチンは体内で合成されないため、食品から摂取する必須脂肪酸が多く、コレステロールを含んでいないというメリットがあります。

納豆菌

大豆から納豆をつくる納豆菌。熱に壊れにくく、腸内でも発酵が進むため、腸内環境を整える効果があるとされます。納豆菌は食物繊維があるとより活発に動くため、納豆が豊富に含む食物繊維によって整腸作用が高められることが期待されています。

【C】【H】【I】【J】【K】【L】【M】

 

 

 

 

納豆の模範的食べ方とポイント

気軽に毎日食べられる納豆ですが、栄養素を余すところなく摂るためには心がけたいこともあります。模範的な食べ方とそのポイントを3つご紹介します。

食べ方ポイント1「たれを入れる前にかき混ぜる」

納豆のネバネバしている主成分はポリグルタミン酸です。ポリグルタミン酸は胃壁を守り、また腸管の老廃物の排泄を促進するのですが、納豆をかき混ぜることでこの成分が増えるといわれています。そこで納豆を食べるときはまずはしっかりかき混ぜて、それからたれや醤油、薬味を加えるとよいそうです。

食べ方ポイント2「加熱はたまに」

血液をサラサラにする働きがあるといわれるナットウキナーゼ。しかし、ナットウキナーゼは熱に弱いため、納豆のもつ成分をしっかり引き出すためには加熱しないで食べた方がよいです。ただし、加熱してもたんぱく質や炭水化物、ミネラルはさほど変性しないので、同じ食べ方が飽きてしまう人は時々加熱調理もしてみましょう。

食べ方ポイント3「夜に食べる」

動脈硬化などを予防する効果があるとされるナットウキナーゼは、納豆を食べてから1時間後から効きはじめ、8~12時間にわたって血栓を溶かす作用があるといわれています。朝ごはんでいただくイメージが強い納豆ですが、夜ごはんに食べることで血流が穏やかな寝ている間に血栓を溶かすなど修復がより進むことが期待できます。

【C】【N】【O】

 

納豆に関するQ&A

納豆は身近な存在だけに、知っているようで知らないことが結構あると思います。Q&A形式で素朴な疑問にお答えします。

 

Q)納豆の食べごろとは?

A)物流が発達しているので、熟成を終えて室(むろ)から出た納豆は、当日か翌日には店に並んでいます。食べごろは1日から7日くらいなので、購入したら数日で食べるのがもっともおいしいといわれています。冷蔵庫で置いておくと発酵が進んで味が深くなるそうです。

 

Q)納豆という名前の由来は?

A)寺の納所(台所)でつくられたことに由来するという説が有力です。寺のお坊さんたちは肉食が禁じられていたので、納豆は重要なたんぱく源だったそうです。

 

Q)西日本で納豆を食べない人が多い理由は?

A)広く知られているように、納豆は西日本であまり食べられていません。関東以北の東京、茨城、福島、宮城などでよく食されています。煮豆を藁に包んで保温してつくる納豆は、雪深い米作地帯で多く用いられ、魚や野菜に代わるたんぱく源でした。しかし、西日本は気候が温暖で、魚も入手しやすい地域が多く、納豆を自らつくって食べる習慣がなく、それが納豆を食べない要因とされています。

【P】

 

体によい納豆を毎日欠かさず適量に

納豆が体によいことはなんとなく知っていても、想像以上にたくさんの栄養素と成分をバランスよく含んでいることがわかっていただけたかと思います。ただし、いくら納豆が栄養豊富なスーパー食品でも、食べすぎや摂りすぎは体内のバランスを崩してしまいます。納豆をできれば毎日欠かさず食べつつ、他の食品もきちんと摂ることが、病気になりにくい丈夫な体をつくることにつながります。

 

 

 

 

<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書物等の一覧>

 

【A】農林水産省Web「にっぽん伝統食図鑑(納豆)」

【B】全国納豆協同組合連合会Web「納豆に関する調査」調査結果報告書(2025年6月公表)

【C】池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』(NHK出版 2018)

【D】公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット(三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量)」

【E】公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット(三大栄養素の脂質の働きと1日の摂取量)」

【F】公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット(三大栄養素の炭水化物の働きと1日の摂取量)」

【G】五関正江監修『ビタミン・ミネラルがよくわかる本――上手にとって健康に!』(つちや書店 2023)

【H】吉田企世子監修『旬の野菜の栄養事典――春夏秋冬おいしいクスリ』(エクスナレッジ 2016)

【I】全国納豆協同組合連合会Web「納豆百科事典」

【J】農林水産技術会議Web「ポリアミンを増強した納豆の開発とポリアミン高含量納豆の機能性の研究」

【K】公益財団法人 長寿科学振興財団Web
「健康長寿ネット(サポニンと効果と摂取量)」

【L】公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット(レシチン・コリンの効果と摂取量)」

【M】全国納豆協同組合連合会Web「納豆の健康効果」

【N】全国納豆協同組合連合会Web「納豆百科事典(不老長寿も夢じゃない)」

【O】名古屋学芸大学 管理栄養学部Web「タンパク質の変性と消化」

【P】全国納豆協同組合連合会Web「納豆百科事典(納豆Q&A)」

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