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栄養豊富でヘルシーな「ナッツ」。その成分や食べ方を探る

栄養豊富でヘルシーな「ナッツ」。その成分や食べ方を探る

おやつとして食べたり、飲酒時につまんだりする「ナッツ」。私たちはなにげなく食していますが、実は栄養豊富な食べものなのです。カロリーが高いうえ保存もきくため、稲作が広まる前の縄文時代には、くりやくるみ、どんぐりなどのナッツが主食だったといわれています。今はアーモンドやピスタチオ、マカダミアナッツといった外国由来のものも含めるとたくさんの種類がありますよね。ナッツの栄養素やその効果とはどのようなものなのか探ってみました。

【A】

 

  1. ナッツはどういうものなの?
  2. ナッツの栄養素やその効果とは?
  3. 種類別にみるナッツの栄養素
  4. ナッツの適切な食べ方とは?
  5. ナッツと人は共存共栄の関係?

 

ナッツはどういうものなの?

ナッツは、漢字では堅果(けんか)と書きます。その名の通り、実が熟しても簡単には果皮が裂けないような、堅くて乾いた果実を指します。農林水産省の資料「ナッツ類」(草稿)には、「ナッツ類は樹木や灌木の種子で、その種子の周りには堅くて食べられない外皮をもつことが特徴」と記されています。
その一方で、豆類である「らっかせい」(ピーナッツ)が「日本食品標準成分表」では「種実類」に分類されてナッツの一つと見なされるなど、ナッツは割と広い意味で捉えられてもいます。

【B】【C】

 

 

 

 

ナッツの栄養素やその効果とは?

さまざまな種類の栄養素をもつのがナッツの特徴です。というのも、ナッツはそもそも植物の種子ですから、発芽して成長していくための栄養分を蓄えているわけです。ナッツが含む主な栄養素や効果を見ていきましょう。

食物繊維が腸内環境を整える

ナッツはおしなべて食物繊維を多く含んでいます。特にらっかせいやアーモンド、ピスタチオの含有量が目立ちます。食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維がありますが、例えばアーモンドの可食部100g当たりの食物繊維総量は11.0gで、そのうち不溶性食物繊維が10.0gと90%超を占めています。不溶性食物繊維は水分を吸って便を増やすため、大腸が刺激を受けて排便がスムーズになる効果があるといわれています。

たんぱく質もしっかりと

ナッツのなかでも、らっかせい、アーモンド、ピスタチオ、くるみは特にたんぱく質が豊富です。たんぱく質は人間の体の15~20%を構成していて、生命活動にとってきわめて大事な栄養素。筋肉や血液、髪、爪などをつくっています。また、たんぱく質はアミノ酸に分解、吸収されたあとさらに再合成されます。その際、体のなかではつくることができないアミノ酸もあるため、ナッツをはじめ食べものからたんぱく質を摂ることが必要です。

ナッツが含む良質な脂質

脂質は体内でエネルギー源となる重要な栄養素です。ところが今、脂質はダイエットの敵と見なされ敬遠されがち。その点、ナッツが有する脂質は「不飽和脂肪酸」と呼ばれるもので、植物や魚の脂に多く含まれています。不飽和脂肪酸は体のなかで合成できないため、食べものから摂取する必要があります。らっかせいが含む不飽和脂肪酸はオレイン酸とリノール酸で、これらには血管を健康に保つことにより生活習慣病を予防する効果があるともいわれています。

高血圧を防ぐカリウム

ピスタチオ、らっかせい、アーモンドが上位となっているカリウム。その他のナッツもカリウムはかなり多く含んでいます。カリウムは、同じミネラルのナトリウムとバランスをとりあって、細胞内液の量や浸透圧などを調整しているほか、血液の循環量を維持したり、筋肉の弛緩と収縮にもかかわっています。カリウムには血圧を調節する働きもあるため、摂取量を増やせば高血圧になるのを抑える効果も期待されています。

リンが骨や歯を丈夫に

リンは、アーモンド、ピスタチオ、らっかせいが多く含んでいます。カルシウムと結合することで骨や歯を構成するのがリンの役割。また、リンはエネルギーを生み出すための代謝にもかかわり、エネルギーを蓄える役目も担っています。そのほかにも細胞膜を構成する成分となり、DNAなどの核酸の成分にもなります。

若さを保つビタミンE

抗酸化作用があるため、老化や生活習慣病の予防効果が見込まれるのがビタミンE。「若返りのビタミン」という異名もあります。ナッツのなかではアーモンドとらっかせいが突出して多く含んでいます。ビタミンEは、体内では細胞膜のなかにあり、抗酸化作用によって細胞膜の脂質の酸化を防ぐといわれています。血液のなかのLDLコレステロールの酸化を抑えることから、動脈硬化の予防効果も期待されています。

脳や神経の働きを促すビタミンB1

ピスタチオ、ぎんなん、くるみなどが豊富に含んでいるのがビタミンB1です。ビタミンB1は、エネルギーとして糖質を用いる脳や神経の働きを、正常な状態に保つ役目があります。もしもビタミンB1が不足したら糖質の代謝がうまくいかなくなり、エネルギーをうまくつくりだせなくなるそう。ですので、糖質が多い食事のときはビタミンB1も余計に摂った方がよいとされています。

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種類別にみるナッツの栄養素

ナッツはさまざまな栄養素をもっていることがわかります。しかし、当然のことですが種子によって栄養素は異なります。ここからは比較的入手しやすい、メジャーなナッツの栄養素を種類別に紹介します。数値を見比べられるよう表にしましたので併せてご覧ください。

[表] ナッツ(種実類)の主な食品の栄養素(可食部100gあたり)

炭水化物
食品名 エネルギー 水分 たんぱく質 脂質 食物繊維
総量
炭水化物 ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム リン 亜鉛 マンガン セレン クロム モリブデン ビタミンA
β-カロテン
当量
ビタミンE
α-トコフェロール
ビタミンK ビタミンB1 ビタミンB2 ナイアシン
当量
ビタミンB6 葉酸 パントテン酸 ビオチン ビタミンC 備考
kcal g g g g g mg mg mg mg mg mg mg mg mg μg μg μg μg mg μg mg mg mg mg μg mg μg mg
アーモンド 炒り 無塩 608 1.8 (19.0) 54.1 11.0 16.6 Tr 740 260 310 480 3.7 3.7 1.19 2.46 - - - 9 29.0 0 0.03 1.04 (7.5) 0.08 48 0.26 - 0
ぎんなん ゆで 169 56.9 (4.0) 1.5 2.4 36.7 1 580 5 45 96 1.2 0.4 0.23 0.25 1 5 Tr 290 1.6 3 0.26 0.07 (2.3) 0.02 38 1.02 2.8 23 薄皮を除いたもの
(くり類)日本ぐり ゆで 152 58.4 (2.9) 0.6 6.6 36.6 1 460 23 45 72 0.7 0.6 0.37 1.07 - - - 37 0 0 0.17 0.08 (1.7) 0.26 76 1.06 - 26 廃棄部位:殻(鬼皮)および渋皮
くるみ 炒り 713 3.1 13.4 68.8 7.5 10.1 4 540 85 150 280 2.6 2.6 1.21 3.44 - - - 23 1.2 7 0.26 0.15 4.4 0.49 91 0.67 - 0 廃棄率:殻つきの場合55%
ピスタチオ 炒り 味つけ 617 2.2 16.2 56.1 9.2 16.9 270 970 120 120 440 3.0 2.5 1.15 - - - - 120 1.4 29 0.43 0.24 5.5 1.22 59 1.06 - (0) 廃棄部位:殻
マカダミアナッツ
炒り 味つけ
751 1.3 7.7 76.7 6.2 10.7 190 300 47 94 140 1.3 0.7 0.33 - 13 2 5 Tr Tr 5 0.21 0.09 3.7 0.21 16 0.50 6.5 (0)
らっかせい 大粒種 炒り 613 1.7 23.6 49.6 11.4 21.5 2 760 50 200 390 1.7 3.0 0.69 2.15 2 0 96 6 10.0 Tr 0.24 0.13 28.0 0.46 58 2.20 110.0 0 別名:なんきんまめ、ピーナッツ
廃棄率:殻26%および種皮4%

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

※たんぱく質は「アミノ酸組成によるたんぱく質」の数値

※脂質のみ文部科学省「食品成分データベース」の数値を使用(七訂[2015年版]のエネルギーの算出方法に基づく成分)

※食物繊維総量はプロスキ変法またはAOAC.2011.25法

※( )は推定値、Trは微量

【A】【B】

アーモンド

アーモンドの原産地はアジア西部です。かつては希少な植物だったそうですが、カリフォルニアで大規模な栽培が行なわれて日本のみならず世界中で食べられるようになりました。
特徴はビタミンEが豊富なこと。10粒程度で1日に必要なビタミンEを摂取できるそうです。先ほど記したようにタミンEには老化を抑える効果があるといわれていることから、アーモンドもアンチエイジング効果が期待される食材として人気があります。

ぎんなん

私たち日本人に馴染みの深いぎんなんは、イチョウの種子です。夜間や暗いところでの視覚を助けるビタミンAを多く含み、ナッツでは珍しくビタミンCも有しています。また、アルコールの代謝にかかわるビタミンB1も多いため、アルコールをよく飲み人はぎんなんをつまみにするとよいかもしれません。
ただし、ぎんなんにはメチルピリドキシンという中毒物質が含まれているため、食べすぎには注意してくださいね。

くり

「くりもナッツなの?」と意外に思われるかもしれませんが、くりは食用の木の実として、日本だけでなく世界各地で古くから栽培されてきました。でんぷんを多く含むほか、たんぱく質や脂質も豊富。また、カリウムなどのミネラル類、葉酸、パントテン酸などのビタミン類もバランスよく有しています。
興味深いのは、くりが含むビタミンCはくりのでんぷん質に守られ、加熱しても損なわれにくいということ。くりの渋皮にはポリフェノールのタンニンが含まれているので、渋皮を残す調理法も試したいところです。

くるみ

紀元前7000年ごろから食べられていたのがくるみです。日本にも縄文時代から自生していたそうで、その主成分は脂質。くるみが有するリノール酸やαリノレン酸は必須脂肪酸といって体内でつくることができないため、食品から摂る必要があるもの。リノール酸やαリノレン酸はコレステロール値を下げる作用があるといわれています。ミネラルやビタミンB1、そしてB6も豊富でバランスのよいナッツですが、かなり高カロリーなので食べすぎないようにしましょう。

ピスタチオ

殻ごと炒り、味つけしたものを食すピスタチオ。栄養価が高いので〈ナッツの女王〉という異名をもちます。表を見ていただくとわかるように、エネルギー、たんぱく質、脂質、食物繊維からナトリウムなどのミネラル類、さらにビタミンA、K、B1、B6、葉酸、パントテン酸に至るまで、ほぼすべての栄養素でピスタチオは上位です。〈女王〉と呼ばれる理由がよくわかります。おつまみでもよいですが、細かく砕いてサラダや肉料理に添えてもよさそうですね。

マカダミアナッツ

オーストラリアの先住民、アボリジニがごちそうとして食べていた常緑樹の実がマカダミアナッツです。ヨーロッパの植物学者が1850年代に発見したことで広まったそうです。脂質が70%以上を占め、そこに含まれるパルミトレイン酸は血管を強化する働きがあるため、脳卒中の予防効果が期待できるといわれています。
ナッツのなかでは珍しく、微量ミネラルの一種「セレン」を含んでいます。セレンは抗酸化作用のある酵素の成分で、甲状腺ホルモンの代謝にもかかわっています。

らっかせい(ピーナッツ)

江戸時代に中国から持ち込まれたらっかせいは、南米ボリビアが原産の一年生作物。マメ科ですがナッツとして扱われています。らっかせいはピスタチオに次いで上位を占める栄養素が多いうえ、モリブデンやナイアシン当量、ビオチンなどは他のナッツの含有量を大きく引き離しています。
また、らっかせいはかつてビタミンQと呼ばれエネルギーの産生を助ける働きがあるとされるコエンザイムQ10を含んでいます。らっかせいは30粒ほどでご飯およそ1杯分のカロリーがあるほど高エネルギーですので食べすぎにはご注意を。

【H】【I】【J】【K】【L】

 

 

 

 

ナッツの適切な食べ方とは?

それぞれ異なるおいしさをもつナッツ。食べ方で気をつけることは何かあるのでしょうか?

適量を食べよう

これまで見てきたように、さまざまな栄養素をもつナッツですが、食べすぎには十分注意してください。脂質が多く、高エネルギーなため、うっかりするとカロリーオーバーになる危険があります。らっかせいでご説明したように、約30粒でご飯1杯分のカロリーになることを忘れないようにしたいですね。

素焼きがおすすめ

ナッツは油やバター、塩分などで加工されたものも多く出回っています。もちろんおいしいからですが、食べすぎ、摂りすぎはよくありません。売り場でナッツを選ぶ際、油を使っていない素焼き(ローストタイプ)の商品にするとよいですよ。塩味のついたナッツも塩分の過剰摂取につながりかねないので避けた方がよさそうです。

 

ナッツと人は共存共栄の関係?

稲作以前の主食だったくりやとちは、実を砕いて水にさらしてアク抜きしてから食べていたそうです。発芽して成長するためにナッツが蓄えていた栄養分を、私たちは昔から工夫しながらいただいてきました。ナッツ(植物)からすると、人間が利用したことで生息域が広がったのはメリットでした。ナッツと人間は、実は共存共栄の関係なのかもしれません。食べすぎに注意しつつ、今まで以上にナッツを楽しみながらいただきたいと思います。

【A】

 

 

 

 

 

<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書物等の一覧>

【A】ミツカン水の文化センター 機関誌『水の文化』68号特集「みずみずしい果実」

【B】農林水産省Web「ナッツ類(草稿)」

【C】日本ナッツ協会Web「ナッツについて」

【D】公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット(食物繊維の働きと1日の摂取量)」

【E】齋藤勝裕著『図解 身近にあふれる「栄養素」が3時間でわかる本』(明日香出版社 2021)

【F】厚生労働省Web「不飽和脂肪酸」

【G】一般財団法人 全国落花生協会Web「落花生の栄養と製品」

【H】五関正江監修『ビタミン・ミネラルがよくわかる本――上手にとって健康に!』(つちや書店 2023)

【I】池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』(NHK出版 2018)

【J】吉田企世子監修『旬の野菜の栄養事典――春夏秋冬おいしいクスリ』(エクスナレッジ 2016)

【K】内閣府食品安全委員会Web「食品安全関係情報詳細」

【L】オーストラリア・マカダミア協会Web「マカダミアの歴史」

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