善玉菌とは?

善玉菌とは?

腸内環境を整えることが健康のカギとなることは、今や多くの人が知るところ。
しかし、腸内には多くの腸内細菌が暮らしており、善玉菌などの細菌たちが健康に大切な働きをしていることを知らない人も多いのではないでしょうか。
ここでは腸内細菌の中でも、からだによい働きをすることが知られている善玉菌が、どのように健康に関わっているか解説します。

  1. 善玉菌とは?
  2. 腸内環境とは?
  3. 善玉菌と悪玉菌
  4. 善玉菌の種類
    • ビフィズス菌
    • 酪酸菌
    • バクテロイデス菌
    • ルミノコッカス菌
    • アッカーマンシア菌
  5. 善玉菌の働き
    • 短鎖脂肪酸を産生する
    • 悪玉菌の増殖や活動を抑える
    • 腸の動きを活性化する
    • 腸粘膜のバリア機能を高める
    • 免疫力を調整する
  6. 善玉菌の増やし方
    • 発酵性食物繊維を摂取する
    • 十分な睡眠をとる
    • 適度な運動をする
  7. まとめ

善玉菌とは?

善玉菌とは腸内細菌のうち、私たちのからだにとってよい働きをする菌のことです。
悪玉菌の増殖を抑えて腸のぜん動運動を活発にするほか、病原菌などからの感染予防、発がん性物質の産生を抑制するなど、さまざまな働きが報告されています。1)

腸内環境とは?

腸内環境とは腸内に生息する細菌の種類や数、バランスによって左右される腸内部の状態のことです。
人の腸内には約1,000種類、40兆個もの腸内細菌が生息するといわれます。1)2)
腸内細菌は大きく分けて善玉菌と悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌の3つがあり、自分たちのテリトリーを作り、腸内細菌叢を構成しています。1)

腸内環境とは?

善玉菌と悪玉菌

善玉菌の代表例にはビフィズス菌や酪酸菌などがあり、人の大腸内に暮らしています。
これらには病原菌の感染防御作用や整腸作用、免疫調節作用などがあるといわれています。
近年では、これら善玉菌の産生する短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)が私たちの健康に重要な役割があるのではという研究報告が多数されています。3)
一方、ウェルシュ菌や大腸菌などと知られる悪玉菌は、不規則な生活や偏食、ストレスなどが原因で増加し色々な疾病との関連があると知られています。
そのため、腸内環境を整えるためにも善玉菌を増やすことは大切ではないかと考えられています。1)

善玉菌の種類

善玉菌にはビフィズス菌や乳酸菌のほか、酪酸菌などがあります。

善玉菌の種類

ビフィズス菌

ビフィズス菌は大腸内に生息する善玉菌の中でも代表的な菌です。
酢酸や乳酸を産生し、腸内環境を弱酸性に傾け悪玉菌の増殖を抑えることや、おなかの調子を整える作用があると知られています。1)

酪酸菌

酪酸菌は大腸内に生息し、酪酸を産生する菌の総称です。
酪酸は免疫力との関連もあるのではと研究が進められています。4)

バクテロイデス菌

バクテロイデス菌は人の腸内細菌叢を占める割合の多い菌です。
肥満の人ではバクテロイデス菌が減っているということも知られています。
また、免疫力に関係する成分(IgA)の産生に関与しているという研究報告もあります。 5)6)

ルミノコッカス菌

ルミノコッカス菌は難消化デキストリンなど水溶性食物繊維を分解して、短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌と知られています。 7)

アッカーマンシア菌

アッカーマンシア菌は腸内のバリア機能に関係するという研究報告があります。
腸の内側はムチンという粘液に覆われており、アッカーマンシア菌が適切に増殖しているとムチンの産生量が上がることが知られています。8)

善玉菌の働き

腸内にすむ善玉菌は私たちの健康と密接な関わりがあることが報告されています。
具体的には悪玉菌の増殖抑制、免疫力を調整するなど作用があるといわれていますので紹介します。

善玉菌の働き

短鎖脂肪酸を産生する

善玉菌たちはエサになる発酵性食物繊維を食べて、酪酸、酢酸、プロピオン酸のような短鎖脂肪酸を産生します。
短鎖脂肪酸は酸なので、腸内環境を弱酸性に傾け悪玉菌の増殖を抑えることや、人のからだに作用して前述のような多くの健康効果をもたらしてくれるといわれています。
また、ビフィズス菌は乳酸と呼ばれる酸を作りますが、こちらは人のからだへの直接的な作用はみられないものの、ほかの善玉菌が短鎖脂肪酸を産生するための材料になるなどの研究報告もあります。9)

悪玉菌の増殖や活動を抑える 

悪玉菌が腸内で過剰に増殖すると生活習慣病や動脈硬化、がんなどの病気のリスクが高くなることが知られています。
善玉菌は酢酸や乳酸を産生し腸内を弱酸性に傾けることが知られているので、善玉菌は悪玉菌の過剰な増殖も抑制してくれているのです。1)

腸の動きを活性化する

あるラットの研究では短鎖脂肪酸は腸の蠕動運動を刺激するのではないかと研究されています。10)

腸粘膜のバリア機能を高める

善玉菌の作り出す短鎖脂肪酸は、腸のバリア機能を高める可能性が知られています。3)

免疫力を調整する

免疫力とは、私たちの体内に侵入した成分が有害なものかどうか判別し、からだを守る仕組みのことです。
善玉菌の産生する短鎖脂肪酸は、IgAと呼ばれる異物を捕捉して除去する成分の産生を誘導することが知られていることから、善玉菌は免疫力の維持にも関係しているといえるでしょう。3)

善玉菌の増やし方

善玉菌を増やすことで健康に大切な多くの効果が得られるといわれていますが、どのような食生活に気をつけると善玉菌を増やすことができるのでしょうか。

善玉菌の増やし方

発酵性食物繊維を摂取する

発酵性食物繊維は、食物繊維の中でも腸内の善玉菌のエサになる食物繊維です。
発酵性食物繊維は小腸では分解や吸収がされないので、善玉菌たちが暮らしている大腸まで到達することができます。
身近な食材では、穀類(オーツ麦、玄米、大麦など)、豆類(大豆、あずき、ひよこ豆など)、果物類(キウイ、みかん、プルーンなど)、海草類などに多く含まれています。
食材によって含まれている発酵性食物繊維の構造や善玉菌のエサの好みが異なるので、いろいろな食材を食事に取り入れると大腸の中の善玉菌たちを元気にすることができます。

十分な睡眠をとる

ある研究では睡眠時間と腸内細菌の状態に関係があるのではないかという報告もあります。
短い睡眠はディフェンシンと呼ばれる抗菌ぺプチドの産生を弱め、腸内細菌のバランスを乱してしまうのではないかというものです。11)

適度な運動をする

運動は大腸の中に暮らしている腸内細菌へ影響するという研究報告もあります。
ある研究では、アスリートの運動強度と腸内細菌の種類の豊富さ(=多様性)に正の相関関係があったと報告されています。
日常生活でもウォーキングやスポーツ、階段を上るなどの運動を取り入れていくことが腸内細菌の多様性を改善していく可能性があります。12)13)

善玉菌の増やし方

まとめ

腸内細菌の中でも健康に有用な効果をもたらすのではないかと知られている善玉菌。
悪玉菌の増殖を抑える、腸管バリア機能を高める、免疫を調整する、短鎖脂肪酸を産生するなど、善玉菌は腸から私たちの健康を守ってくれています。
肉や油、砂糖を多くとる食事や生活習慣の乱れ、ストレス、睡眠不足などが続くと善玉菌は減ってしまうと考えられています。
日頃から発酵性食物繊維を食事にとりいれて善玉菌を増やす生活を心がけましょう。

監修者内藤 裕二

京都府立医科大学大学院医学研究科
生体免疫栄養学講座 教授

執筆ミツカン編集部

<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書籍等の一覧>

1)腸内細菌と健康 - e-ヘルスネット - 厚生労働省
2) Sender R, et al. (2016) Revised Estimates for the Number of Human and Bacteria Cells in the Body. PLoS Biol 14(8)
3)Hidenori Shimizu et al. Regulation of host energy metabolism by gut microbiota-derived short-chain fatty acids, Glycative Stress Research 2019; 6 (3): 181-191
4)Furusawa, Y et al. Commensal microbe-derived butyrate induces colonic regulatory T cells. Nature 10.1038/nature12721. 2013.
5)細野朗:バクテロイデスと免疫 腸内細菌学雑誌 27 : 203-209,2013
6)安藤 朗:新たな臓器としての腸内細菌叢 日消誌 112:1939-1946, 2015
7)Abreuy Abreu AT et al. Fibra dietaria y microbiota, revisión narrativa de un grupo de expertos de la Asociación Mexicana de Gastroenterología, Rev Gastroenterol México. 2021;86:287-304
8)金井 隆典:腸内細菌と消化器疾患. 日内会誌 2019 ; 108 ; 1939 – 1945
9)渡部恂子:腸内糖代謝と腸内細菌 腸内細菌学雑誌 19 : 169–177,2005
10)J R Grider et al. The peristaltic reflex induced by short-chain fatty acids is mediated by sequential release of 5-HT and neuronal CGRP but not BDNF. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2007 Jan;292(1):G429-37
11)Yu Shimizu, et al. Shorter sleep time relates to lower human defensin 5 secretion and compositional disturbance of the intestinal microbiota accompanied by decreased short-chain fatty acid production. Gut Microbes, 15:1, 2023
12)Mehrbod Estaki et al. Exercise and associated dietary extremes impact on gut microbial diversity. Gut 2014;63:1913–1920.
13)桑田有:ヒトの腸内細菌叢 シンポジウム 環境と響き合うこころとからだ 第13回学術集会 2011.09

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