インナービューティーとは?期待できる効果や実践のポイントなどを解説
「体のなか」からきれいになるインナービューティー
いつまでも若々しく健康でありたい――これは今を生きる私たちの切実な願いではないでしょうか。
そこで今、注目を集めているのが「インナービューティー(内面美容)」です。
メイクやヘアケア、スキンケアなど外面を磨く美容はもちろん大切です。そこからさらに一歩踏み込んで、内臓やメンタルといった「体のなか」からきれいになることを目指すのがインナービューティーなのです。
ここではその基本を紹介しますので、気になったらぜひチャレンジしてください。
インナービューティーによって期待できる効果とは?
もともと人間に備わっている自然治癒力。それをインナービューティーで引き出しましょう。疲れにくくなったり、肌のつやが増すなど、さまざまな効果が期待できるといわれています。
効果1)腸内環境を整えて免疫力アップ
「体のなか」の調子を整えるために大事なのは腸内環境です。大腸には約1000種類、およそ40兆個もの腸内細菌がいて、複雑で多様な関係性のもと私たちの体を助けてくれています。1)
例えば、体にウイルスなどの病原体が侵入した場合、それに対応する免疫機能を司るのはリンパ節が知られていますが、実は腸も大きな役割を担っています。
腸内環境のバランスが整っていれば、免疫機能が正常に働き、病原体も素早く体外に排出できるそうです。2)
効果2)基礎代謝の向上でスタイルを維持
インナービューティーを実践するには食事や睡眠などさまざまな生活習慣の見直しが必須です。そして、それらを継続して取り組むことで基礎代謝のアップが望めます。残念ながら年齢を重ねると基礎代謝は低下します。厚生労働省によると、50歳代の男性(体重70kg)は20歳代に比べて1日当たり175kclほど下がるそうです。3)
また、令和4年「国民健康・栄養調査」を見ても50歳代の男性の肥満率は高めです。4)
しかし、基礎代謝が向上すれば太りにくくなるため、今のスタイル(体形)を維持することにつながるのです。
出典:厚生労働省 令和4年「国民健康・栄養調査」
効果3)血行を促進して冷えやこりが緩和
運動や入浴など血行を促す行為もインナービューティーの一環です。適度な運動は全身の血行を促進しますし、湯船に体を浸すことで全身が温まって血液の巡りがよくなるとされています。5)
体の冷えや肩こりに悩まされている人はとても多いのではないでしょうか。それらの要因の一つに血行の悪さが挙げられます。血行がよくなければ全身に栄養素が行き渡らないうえ、老廃物が溜まって、肌荒れなど外見にも影響を与えてしまうのです。
血行を促すことを習慣づけて、健康的な日々を過ごしましょう。
インナービューティー実践のポイント
比較的新しい概念であるインナービューティーですが、さほど難しいものではありません。ただし、食事や運動など広範にわたる基本的な生活習慣の見直しが必要となります。
ポイント1)野菜をバランスよく摂る
腸内環境を整えるには、まず日々の食事が大切です。特に重視したいのは野菜類の摂取。白菜やほうれん草などの葉茎菜類はもちろんのこと、ダイコンやニンジン、イモ類などの根菜類もしっかり摂ってください。根菜類は特に食物繊維やミネラルが豊富といわれています。1)
食事が変われば腸内環境も変わります。ある研究によると、日本人の腸内細菌叢は5つのタイプに分かれていて、いくつかのタイプには腸疾患や胃腸障害などとの関連性が示唆されています。5)
野菜をまんべんなく摂るように心がけて、腸内環境を整えたいものです。
ポイント2)こまめに体を動かす
コロナ禍を経て、会社へ通わず自宅で作業する在宅ワークが一般的になりました。よいことは多いものの、身体面で考えると通勤のために駅まで歩いたり、駅の階段を上り下りしていたときに比べてどうしても運動量は低下しがちです。体を動かさなければ、糖尿病や心臓病などに罹患するリスクが上がるといわれています。6)
もっとも望ましいのは1日に60分体を動かすこと。ただし連続でなくてもよいので、買い物は徒歩で行く、庭仕事を心がける、ストレッチをするなどこまめに動くことでも効果は見込めます。座りっぱなしになりがちな在宅ワーク時は、30分ごとに約3分、あるいは1時間に5分程度は立ち上がって体を動かすとよいそうです。
ポイント3)日ごろから水分補給を
運動したときは水分を摂らなければいけないことは、多くの人が心がけていると思いますが、日常的にも水分は意識的に摂るようにしましょう。人の体に占める水の割合(体水分量)は、成人男性が約53%、成人女性が約45%。ある研究によると、1日につき体水分量の約10%もの水分が失われていることが明らかになっています。7)
水分が足りなければ血液が濃縮されてしまいますし、暑さが厳しい時期には熱中症のリスクも高まります。一度にたくさん水分を摂るよりも、こまめに少しずつ補給する方がよいといわれています。
夜、寝る前に飲む水のことを「宝水」と昔の人は呼んだそうです。健康にとって水分補給は大事だと経験則で知っていたのですね。8)
ポイント4)深い眠りが体を修復
睡眠は脳を休ませ、体と心の疲れを回復する大切な行為であることは広く知られています。深い眠りは成長ホルモンの分泌を促し、細胞の新陳代謝を進めます。眠っている間に腸などの内臓をはじめ、皮膚や筋肉の損傷が回復する……まさに「体のなか」からきれいになるインナービューティーです。
睡眠時の理想的な室温は、夏ならば25~28℃、冬は15℃、湿度は50%がよいといわれています。9)
先述の運動と組み合わせると、よりよい眠りが得られます。夕方から夜にかけて、寝る時間のおよそ3時間前に少し速足の散歩、またはゆっくりジョギングといった軽めの有酸素運動が好ましいそうです。10)
ポイント5)湯船に浸かって血行促進
質の高い睡眠を得るためには入浴も欠かせません。入浴による温熱作用で血流が増えるため、体の隅々まで血液がいきわたります。血液は酸素や免疫物質など大事なものを運び、二酸化炭素や老化物質など不要なものを回収するという大切な働きを担っています。
お勧めはシャワーではなく「湯船に浸かる」こと。入浴は寝る寸前よりも眠りにつく2~3時間前に行なうことが効果的といわれています。10)
注意点はお湯の温度。皮膚の乾燥を強めてしまうため、42℃を超えるような熱めの湯は避けた方がよいです。また、お風呂から出て10分後までは皮膚の水分量が多いため、湯上がり後の保湿ケアは10分以内に済ませましょう。11)
「体のなか」からにじみ出る美しさを
インナービューティーは、なにか一つをやればよいというものではありません。
バランスのよい食事や適度な運動、積極的な水分補給、環境を整えることでもたらされる質の高い睡眠、湯船に身を浸して血行を促すなど、日々のさまざまな生活習慣を一つひとつ見直して実践することの積み重ねといえそうです。
体のなかは自分の目では見えませんが、健康であればそれはいずれ必ず外見に現れてきます。インナービューティーの実践を通じて、サプリメントなどに頼りすぎず、体のなかから美しさがにじみ出るような健康的な生活を目指しましょう。
監修ミツカン編集部
〈執筆に利用した学術論文、総説・解説、書籍等の一覧〉
1)国澤 純著『9000人を調べてわかった腸のすごい世界――強い体と菌をめぐる知的冒険』(日経BP 2023)
2)川本 徹著『結局、腸が9割――名医が教える「腸」最強の健康法』(アスコム 2022)
3)加齢とエネルギー代謝 - e-ヘルスネット - 厚生労働省
4)厚生労働省 令和4年「国民健康・栄養調査」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42694.html
5)Tomohisa Takagi et al., “Typing of the Gut Microbiota Community in Japanese Subjects”Microorganisms. 2002 Mar 20; 10(3):662
6)「新しい生活様式」において体を動かす工夫 - e-ヘルスネット - 厚生労働省
7)ミツカン水の文化センター 機関誌『水の文化』74号「計算で導き出される1日に必要な「水分量」」
https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no74/09.html
8)藤田紘一郎著『腸がすべて解決!』(三笠書房 2022)
9)季刊『こすもす』(東急不動産、東急リバブル 2009年春号)
10)快眠と生活習慣 - e-ヘルスネット - 厚生労働省
11)早坂信哉著『お風呂研究20年、3万人を調査した医者が考案――最高の入浴法』(大和書房 2018)