発酵性食物繊維の摂取方法は?
監修/青江 誠一郎先生(大妻女子大学家政学部食物学科 教授 農学博士)
食物繊維の中でも、からだによい働きをする有用菌(通称、善玉菌)のエサになる「発酵性食物繊維」。
食事にとり入れるには、どんな方法が効果的なのでしょうか。
発酵性食物繊維が多く含まれる食材と、おすすめの摂取方法をご紹介します。
- 発酵性食物繊維とは?
- 発酵性食物繊維の効果
- 発酵性食物繊維が多く含まれる食材
-
発酵性食物繊維のとり方のポイント
- いろいろな種類の発酵性食物繊維をとる
- 毎日の主食に発酵性食物繊維を取り入れる
- 発酵食品と一緒にとる
- まとめ
発酵性食物繊維とは?
発酵性食物繊維は善玉菌のエサになる特別な食物繊維。
腸内細菌の中でもとくに善玉菌のエサになり、エサを食べた善玉菌は私たちの健康のために有用な働きをしてくれることが日々明らかになってきています。
発酵性食物繊維は、近年の腸活ブームでも積極的にとりたい栄養素として注目されています。
発酵性食物繊維の効果
腸内には1,000種類以上もの腸内細菌が暮らしており、彼らが適切なバランスを保っていることが健康に大切であるということが、近年の研究で明らかになってきています。
しかし、多くの日本人は腸内細菌のエサになる栄養素の摂取量が少なく、健康に大切な善玉菌へのエサを十分に届けることができていないといわれています。
では、その悩みを解消するためにはどんな栄養素に注目するといいのでしょうか。
そう、それは発酵性食物繊維。
善玉菌は発酵性食物繊維をエサとすることで増殖します。
この増殖の過程で善玉菌は短鎖脂肪酸という成分を作り出します。
短鎖脂肪酸には、腸内環境を弱酸性にすることで悪玉菌の過剰な増殖を抑えたり、腸管のバリア機能を高めたり、腸のぜん動運動を促進して便通を改善するなどの効果があることが知られています。
このように、発酵性食物繊維をとることは、善玉菌が短鎖脂肪酸を産生することを介して私たちにさまざまな効果をもたらしてくれることに繋がるのです。1)2)
発酵性食物繊維が多く含まれる食材
発酵性食物繊維の代表成分としては、
- 穀類(オーツ麦、玄米、大麦、全粒小麦)に多く含まれる「β-グルカン」「アラビノキシラン」
- 果物類(キウイ、みかん、プルーン)に含まれる「ペクチン」
- 豆類(大豆、あずき、ひよこ豆)に含まれる「難消化性オリゴ糖」
- 根菜類(ごぼう)に含まれる「イヌリン」
- 海草類に含まれる「アルギン酸」
- 豆類、いも類(あずき、インゲン豆、サトイモ、サツマイモ)に含まれる「レジスタントスターチ」
などが挙げられます。
これらの食材をとることで、善玉菌のエサになる発酵性食物繊維を大腸まで届けることができ、からだにうれしい効果を期待できます。2)3)
発酵性食物繊維のとり方のポイント
発酵性食物繊維は種類によって大腸への届き方や発酵の仕方が変わるといわれています。
その特徴を押さえながら、効果的な方法で善玉菌を元気にしましょう。
ポイント1 いろいろな種類の発酵性食物繊維をとる
発酵性食物繊維は、種類や繊維の大きさによって腸内で発酵する場所、食べてから発酵するまでの時間が異なります。
イヌリン、難消化性オリゴ糖などは繊維長が短く発酵速度が速いので、腸の入り口付近で発酵します。
β-グルカン、ペクチンなどは繊維長が長いので、腸の中央付近以降で発酵します。
アラビノキシラン、レジスタントスターチなどは不溶性の形態で存在するので、発酵時間が非常に遅く、おもに腸最奥の出口付近で発酵します。
大腸は1.5mもあり、腸の入口から出口に向かうにつれて酸素が少なくなっていきます。
つまり、腸の部位によって住んでいる善玉菌たちは異なり、エサの好みも異なるのです。
そのため、いろいろな発酵性食物繊維を大腸に届けることが善玉菌を元気にするために大切だと言われています。3)4)
ポイント2 毎日の主食に発酵性食物繊維を取り入れる
発酵性食物繊維は善玉菌のエサになりますが、毎日摂取しないと腸の中の発酵性食物繊維は不足し、腸内細菌のエサがなくなってしまいます。
善玉菌から健康にうれしい効果をもらい続けるには、発酵性食物繊維を毎日とることが必要です。
おすすめは、毎日食べている主食を発酵性食物繊維が含まれるものに替えること。
穀類は発酵性食物繊維が多く含まれ、主食になるので量をとりやすくなります。
白米をもち麦や玄米に替えたり、パンやパスタを全粒粉のものにするなど、工夫してみましょう。
また、海草や豆類を多く含む和食中心の食事にするのも効果的です。
例えば、朝食に発酵性食物繊維をとると一日を通じて善玉菌が発酵性食物繊維をエサにして、私たちの健康にうれしい効果を出し続けてくれることが期待できます。
ポイント3 発酵食品と一緒にとる
発酵食品として有名なヨーグルトや納豆などは、発酵性食物繊維とは働きが異なります。
発酵食品は、含まれている善玉菌を腸に届けるもの。(プロバイオティクス)
発酵性食物繊維は、もともと人の腸内にいる善玉菌のエサになるものです。(プレバイオティクス)
どちらも健康に大切な栄養素ですが、併せて取り入れることで、さらに腸の健康にうれしい効果があると知られています。
まとめ
善玉菌のエサになることで、私たちの健康にうれしい効果をもたらしてくれる発酵性食物繊維。
その効果を継続して得るためにも、発酵性食物繊維を多く含む食材を効果的な方法で取り入れていきたいですね。
まずは毎日の主食を、発酵性食物繊維を含む食材に切り替えてみてください。
主食になりやすい穀類にも、発酵性食物繊維が含まれているので量をとりやすいですよ。
例えば、朝食に発酵性食物繊維を取り入れると、一日を通じて腸内の善玉菌が元気になり、からだにうれしい効果を作り続けることが期待できます。
毎日の健康習慣に“善玉菌と一緒に作る健康”を取り入れていくためにも、食事に発酵性食物繊維をプラスしていきましょう。
監修者
青江 誠一郎昭和33年10月 東京生まれ
現職:大妻女子大学家政学部食物学科 教授 農学博士
研究:穀物中の食物繊維の機能性研究がテーマ。
経歴:1984年 千葉大学大学院園芸学研究科修士課程修了、1984年 雪印乳業(株)入社、2003年 大妻女子大学家政学部助教授、2007年 大妻女子大学家政学部教授、現在に至る。
学会:日本食物繊学会理事長,日本栄養・食糧学会評議員,日本栄養改善学会評議員
受賞:2007年 日本栄養改善学会・学会賞受賞、2010年 日本食物繊維学会・学会賞受賞、2022年 日本栄養・食糧学会・学会賞受賞
著書:食物繊維(第一出版)、毒出しごはん(河出書房)
<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書籍等の一覧>
1)Hidenori Shimizu et al. Regulation of host energy metabolism by gut microbiota-derived short-chain fatty acids, Glycative Stress Research 2019; 6 (3): 181-191
2)富永靖弘:最高の食べ方が分かる! 老けない腸の強化書 専門医が教える45の金言 新星出版社 2023
3) Jane Higdon et al., Fiber, Linus Pauling Institute Oregon State University 2004
4) Seiichiro Aoe et al., Effects of BARLEYmax and high-β-glucan barley line on short-chain fatty acids production and microbiota from the cecum to the distal colon in rats, plos one, 2019