意外と知らない「炭水化物」 働きや含まれる食べものを紹介!

今回は「知っているようで知らない」炭水化物について、体内でどのような働きをするのか、摂取量が足りないとどんな影響があるのか、そして炭水化物を多く含む食べものなどを、できるだけ簡単にご紹介します。
- 炭水化物は三大栄養素の一つ
- 炭水化物が体に与える影響とは?
- 炭水化物が足りないとどうなるの?
- 炭水化物の摂取量目安を考える
- 炭水化物が多く含まれている食品とは?
- 炭水化物を摂取する時のポイントは?
- しっかり摂ろう、炭水化物
炭水化物は三大栄養素の一つ
炭水化物とは、脂質、たんぱく質とともに私たちが生きていくために必要なエネルギー源となるものです。炭水化物、脂質、たんぱく質の3種を合わせて「三大栄養素」と呼ぶように、人体にとってとても大事な成分です。
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炭水化物が体に与える影響とは?
炭水化物は「糖質(易消化性)」と「食物繊維(難消化性)」に大別されます。体内で消化されやすいものが糖質で、消化されにくいものが食物繊維。いずれも体内で異なる働きを担っています。
炭水化物のうち糖質の主な役割は、脳や神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋などに、エネルギー源となるぶどう糖(グルコース)を供給することです。
さらに糖質は、単糖類、二糖類(少糖類)、多糖類に分けられます。単糖類はその名の通り1つの糖分子からなるもので、二糖類は糖分子が2つ結合したもの、多糖類は多数の糖分子が結びついたものです。大まかにいうと、単糖類はぶどう糖(グルコース)や果糖など、二糖類(少糖類)は砂糖や麦芽糖など、多糖類はでんぷんやグリコーゲンなどが挙げられます。
炭水化物から摂取する糖質は、体内で単糖に分解されたのち吸収されてエネルギー源となります。すぐにエネルギーに変換されるのがぶどう糖(グルコース)ですが、体内では主にグリコーゲン(ぶどう糖の重合体)として蓄えられ、必要に応じてぶどう糖(グルコース)になります。しかし、グリコーゲンは脂質やたんぱく質と比べて貯蔵量が少ないうえ、体内で常に消費されているため不足になりがちです。
しかも、炭水化物は食物繊維も含んでいます。食物繊維はエネルギー産生成分の一つに挙がられていますし、腸内の善玉菌のエサになる発酵性食物繊維として知られているように健康を維持するためにとても大切な成分です。炭水化物を避けることなく、ふだんの食事からしっかり摂りましょう。
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炭水化物が足りないとどうなるの?
一時期、「炭水化物抜きダイエット」なるものが流行りましたが、食事を制限することによって炭水化物の摂取を抑えるのは体にあまりよくないといわれています。特に糖質が足りなくなると、血糖値が平常時の値よりも低くなる「低血糖」になってしまうことがあります。
低血糖は、食事の量が少なかったり食事をする時間がずれたりしたときなどに起こりやすく、生あくびやふらつき、めまい、手足の震えなどの症状が出ます。ひどいときには意識がもうろうとするケースもあるそうです。
また、脳はぶどう糖(グルコース)を常に消費しているため、炭水化物に含まれる糖質が足りなくなるとエネルギー不足になり、注意力や判断力が低下するともいわれています。
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炭水化物の摂取量目安を考える
では、炭水化物は1日にどれくらい摂ればよいのでしょうか?
厚生労働省が2025年2月に公表した「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」には「炭水化物の必要量は不明であること、また乳児以外では十分に炭水化物を摂取していることから、推定平均必要量、推奨量及び目安量は設定しない」と記されています。
そこで一つの目安として、厚生労働省「食事摂取基準」(2020年版)が挙げている三大栄養素比率「たんぱく質13~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%」を参考に考えてみます。
一日に必要なエネルギー量について、活動量の少ない成人女性は1400~2000kcal、男性は2200±200kcal程度が目安とされています。男女が重なる「2000kcal」を仮の基準とした場合、炭水化物の比率は50~65%ですので「1000~1300 kcal」。さらに、炭水化物(糖質=易消化性)は1g当たり約4kcalのエネルギーを生むとされていますので、1000~1300 kcalを4kcalで除すると「250g~325g」となります。炭水化物の摂取量目安は「1日に250g~325g」と言えそうです。
ただし、三大栄養素比率は、年齢や性別だけでなく個人の身体活動レベルによっても変わります。特にご高齢の方は活動レベルだけでなく、そもそもたんぱく質を多く摂ることが推奨されていますので、これはあくまでも参考程度にとらえてください。
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関連リンク:
公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット」高齢者の食事摂取基準
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炭水化物が多く含まれている食品とは?
炭水化物は、私たちの主食であるごはんやパン、うどん、パスタなどの穀類、そしてじゃがいもやさつまいもなどのいも及びでん粉類、砂糖やはちみつ、果実類などに多く含まれています。
ただし、砂糖や果物など甘いものは血糖値を急上昇させる恐れがあるため、穀類やいも及びでん粉類を多く摂ったほうがよいとされています。日常的によく食べる食品や、入手・調理しやすい食品の一覧を表にしてみます。
米やパン、麺類など「穀類」
日ごろ口にすることが多い白米やパン、麺類は私たちの食生活に欠かせない主食です。一般的な白米(精白米 うるち米)は炭水化物が多いですし、玄米や胚芽米(胚芽精米)は白米よりもミネラルが豊富です。また、同じパンでもロールパンの方が食パンよりも脂質量が多いので注意が必要です。
[表1]穀類に含まれる炭水化物量
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量【g】 | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む)【g】 |
---|---|---|
コーンフレーク | 84.6 | 1食分:60g |
ライ麦パン | 54.6 | 1枚(6枚切り):60g |
コッペパン | 53.5 | 1個:100g |
ぶどうパン | 52.1 | 1枚(6枚切り):60g |
ロールパン | 50.6 | 1個:30g |
角形食パン | 48.4 | 1枚(6枚切り):60g |
おにぎり(塩むすび。のり、具材なし) | 39.7 | 1個:100g |
水稲めし 精白米 うるち米 | 36.1 | お茶碗1杯:150g |
水稲めし 胚芽精米 | 35.3 | お茶碗1杯:150g |
水稲めし 玄米 | 33.4 | お茶碗1杯:150g |
そば ゆで | 27.4 | 1人前:100g |
そうめん・ひやむぎ ゆで | 24.2 | 1人前:100g |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
香川明夫監修『八訂 食品成分表 2025』(女子栄養大学出版部 2025)など
さつまいもなど「いも及びでん粉類」
さつまいも、みずいも(田芋)、じゃがいもなどのいも類は炭水化物を多く含んでいるうえ、脂質が少ないという特徴があります。はるさめの主原料はじゃがいもやさつまいものでん粉。また、いも類の糖質はほぼでん粉で、難消化性のでん粉「レジスタントスターチ」を含んでいます。レジスタントスターチは大腸で食物繊維と同じような働きをすると言われ、近年注目されている成分です。
[表2]いも及びでん粉類に含まれる炭水化物量
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量【g】 | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む)【g】 |
---|---|---|
普通はるさめ 乾 | 86.6 | 1食分:20g |
さつまいも 塊根 皮つき 生 | 31.2 | 中1本:200~250g |
みずいも 球茎 生(田芋) | 27.5 | 1個:200~500g |
じゃがいも 塊茎 皮つき 生 | 16.0 | 中1個:100~120g |
ながいも 塊根 生 | 14.8 | 1本:500~700g |
さといも 球茎 生 | 12.6 | 中1個:50~60g |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
香川明夫監修『八訂 食品成分表 2025』(女子栄養大学出版部 2025)など
はちみつなど「砂糖及び甘味類」
砂糖は世界でもっとも多く使われている甘味料といわれています。ただし、食後に血糖値を急上昇させるケースもあります。砂糖とともに天然の甘味料として広く使われているのがハチミツです。ハチミツは果糖を多く含んでいるほか、食後の血糖値の上昇が砂糖よりも緩やかとされています。
[表3]砂糖及び甘味類に含まれる炭水化物量
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量【g】 | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む)【g】 |
---|---|---|
和三盆糖 | 99.6 | 大さじ1:9g |
上白糖 | 99.3 | 大さじ1:9g |
三温糖 | 99.0 | 大さじ1:9g |
黒砂糖 | 88.9 | 大さじ1:15g |
はちみつ | 81.7 | 大さじ1:21g |
メープルシロップ | 66.3 | 大さじ1:21g |
黒蜜 | 49.7 | 大さじ1:18g |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
香川明夫監修『八訂 食品成分表 2025』(女子栄養大学出版部 2025)など
干しぶどうなど「果実類」
糖質を全般的に多く含んでいるのが果実類です。バナナやぶどうなどが糖質を多めに含む代表格。果実はビタミン類も併せて摂れる利点もあります。果実が含む食物繊維は野菜よりも少ないものの、水溶性食物繊維の割合が多いとされています。
[表4]果実類に含まれる炭水化物量
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量【g】 | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む)【g】 |
---|---|---|
ぶどう 干しぶどう | 80.0 | 大さじ1:12~13g |
かき 干しがき | 72.7 | 1個:30~50g |
バナナ 生 | 22.2 | 1本:100~150g |
かき 甘がき 生 | 16.1 | 中1個:150~200g |
さくらんぼ 国産 生 | 15.4 | 1個:7g |
りんご 皮つき 生 | 15.1 | 1個:250~300g |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
香川明夫監修『八訂 食品成分表 2025』(女子栄養大学出版部 2025)など
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関連リンク:
文部科学省「日本食品標準成分表について」
炭水化物を摂取する時のポイントは?
私たちは体に必要なエネルギーの多くを炭水化物から摂っています。特に主食としている白米や麺類、パンなどの穀類をもとにした食品の比重が高いため、必要以上に摂取するとカロリーオーバーとなって肥満につながる可能性もあります。
かといって、主食である白米の摂取量を極端に減らすと物足りなく感じるあまり、脂質の多い副菜を摂りすぎる傾向もあるようです。脂質の摂取量を減らすには、炒め物ではなく鍋料理にする、ラーメンのスープは飲まないといった工夫も必要です。
また、炭水化物そのものだけでなく、体のなかのさまざまな機能を正常に保つ役割のあるビタミンも大切です。ビタミンB群はエネルギー代謝にかかわっていて、特にビタミンB1は糖質の代謝に欠かせない存在。豚肉やうなぎなどビタミンB1を多く含む食材を摂るように心がけましょう。
【B】
しっかり摂ろう、炭水化物
「炭水化物は太る」という偏った情報から、炭水化物を摂らないダイエット法が注目された時期もありましたが、冒頭でお伝えしたように炭水化物は三大栄養素に挙げられるほど重要なものです。炭水化物を極端に摂らない食生活を過ごすと、糖質と食物繊維を補給しないことになってしまいます。
むやみに炭水化物を避けるのではなく、炭水化物の重要性を理解したうえでバランスのよい食生活を心がけたいですね。
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<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書物等の一覧>
【A】公益財団法人 長寿科学振興財団Web「健康長寿ネット」
【B】竹並恵里監修『炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典――糖質から食物繊維・甘味料成分まで』(ナツメ社 2022)
【C】山田 悟著『図解 炭水化物の話――眠れなくなるほど面白い』(日本文芸社 2024)
【D】神戸市立医療センター中央市民病院Web「低血糖ってなに?」