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なぜ甘いものが食べたいときがあるの? 食欲と体の関係を解説!

なぜ甘いものが食べたいときがあるの? 食欲と体の関係を解説!

すぐにでも布団やベッドにもぐりこまなければいけないような夜遅くに「ドーナツが食べたい!」「チョコレートをかじりたい!」と思ったことはありませんか。でもこんな時間だから、となんとか我慢しますよね。なぜ私たちはふいに甘いものが食べたくなるのでしょうか? どうやらそれは心身の状態にかかわっているようです。甘いものが食べたいと思うときの心と体の状態について考えてみます。

 

  1. 甘いものが食べたいのはなぜ?
  2. 食べたいものでわかる体の状態とは?
  3. 甘いものが食べたい時の対処法
  4. 甘いものに頼らない「ストレスコントロール術」
  5. 時には甘いものでリラックスを

甘いものが食べたいのはなぜ?

甘いものの代表的存在といえばお菓子です。今、私たちは主に和菓子と洋菓子を食べていますが、海外のお菓子の発祥は紀元前8200年ごろのパン菓子とされています。そして紀元前2000年ごろには果実類で甘みをつけたお菓子がつくられたと推定されています。そして和菓子ですが、その原型は西暦600年代に遣隋使を通じて導入されたといわれています。

そもそも菓子は「果子」、つまり木の実の意味だったという説が根強いそうです。空腹を感じた古の人びとは野生の木の実や果実を食べていて、それが間食としての果子=菓子の始まりというのです。

甘いお菓子を食べるとなんとも言えない幸福感を覚えますよね。甘いものが食べたくなるのは、いくつかの理由があるようです。

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①ストレスの影響の可能性

疲れたときに甘いものを食べたくなるのは「脳からの指令」といわれています。エネルギーを消費しすぎると、体内に蓄えていたグリコーゲンが失われて糖分を補給できなくなることから「甘いものが必要だ」と命じられた結果、生理状態の反応として甘みを欲するのだそうです。特に砂糖については、摂取してから消化して吸収するまでの時間が短いことが知られています。

②三大栄養素が不足している可能性

炭水化物、脂質、たんぱく質は私たち人間にとって、とても大切な「三大栄養素」です。甘いものを欲するときは、炭水化物が足りていない状態である可能性が高いそう。炭水化物は糖質と食物繊維で構成されていますが、この糖質が足りないと体や脳にとってよくない状態であると判断して、甘いものが食べたくなるということのようです。

③ホルモンバランスが変化している可能性

脳内においては、脳を興奮させることで集中力を高める「ドーパミン」、そして精神を安定させる役割をもつ「セロトニン」などが神経伝達物質として働いてバランスを保っています(いずれも体全体に作用するホルモンとして働くこともある)。セロトニンの合成にはアミノ酸「トリプトファン」が必要ですが、血液中にブドウ糖が多ければトリプトファンは脳内に取りこみやすいそうです。そうした信号を受けとるからこそ、自然に甘いものを欲するとされています。

④血糖値が変化している可能性

激しい運動や力仕事をしたあとは、筋肉や肝臓に蓄積されたブドウ糖「グリコーゲン」が失われるため、筋肉のなかにあるアミノ酸からブドウ糖を生み出そうとする結果、血糖値が下がるなど変化が生じます。血糖値が下がるとパフォーマンスに影響が出ますので、こうした体内の変化を受けとめることで、甘いものを摂ろうとするのかもしれません。

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食べたいものでわかる体の状態とは?

今回の主要テーマである「甘いもの」以外にも、私たちは「塩っ辛いもの」「脂っこいもの」などを無性に食べたくなるときがありますよね。実は、食欲とは基本的に足りていないエネルギーを摂取するための機構なのだそうです。つまり、体内におけるエネルギーの過不足を脳がモニタリングして、食べるという行動を促すようです。例をいくつか挙げてみますが、皆さんにも思い当たる節があるのではないでしょうか。

「チョコレート」が食べたくなる場合

体のなかにマグネシウムが不足しているとチョコレートが食べたくなるといわれています。マグネシウムは、骨に50~60%、筋肉におよそ30%が含まれていて、体内にある約300種類もの酵素をサポートしてエネルギーを生むミネラルです。特に疲れたときに素早く糖分が摂れるチョコレートを欲するようです。

「しょっぱいもの」が食べたくなる場合

「しょっぱいものが食べたくなるときは塩分が足りていない証拠」と昔からよくいわれてきました。それは汗をかいたとき、水分とともにナトリウムやカリウムなどのミネラルが失われやすいからだそうです。塩分を過度に摂りすぎないようにしながら、上手に補給したいですね。

「脂っこいもの」が食べたくなる場合

カリウムが不足したときに脂っこいものが食べたくなる可能性が高いそうです。カリウム不足によって排泄機能が落ちることで水分が体内に溜まりやすくなり、「脂っこいものが食べたい」と脳が指令を出すといわれています。下痢や大量に汗をかいたときにカリウムは失われやすくなります。

「酸っぱいもの」が食べたくなる場合

疲労物質である「乳酸」が体内に溜まって、疲れたと感じるときに酸っぱいものが欲しくなるとされています。クエン酸やビタミン類が不足すると生きていくために必要なエネルギーを生み出す「クエン酸回路」がうまく働かなくなるため、梅干しや酢、柑橘系などを欲するのだそうです。

「辛いもの」が食べたくなる場合

辛いものを無性に食べたくなるのは、ストレスを感じているからなのかもしれません。辛いものを食べたとき、脳は辛みからの痛みをやわらげるためにβ-エンドルフィンと呼ばれる神経伝達物質を分泌するといわれています。β-エンドルフィンは快楽ホルモンとも呼ばれていて、一度この感覚を覚えると辛いものを求めつづける傾向に陥るため、注意したほうがよさそうです。

「氷」が食べたくなる場合

ガリガリと氷をかじりたくなる場合は、鉄不足が疑われるそうです。氷をかじる行為は「氷食症」とも呼ばれ、鉄欠乏性貧血や隠れ貧血の可能性があるといわれています。特に月経のある女性は男性に比べて鉄を多く損失することもあり、鉄は重要なミネラルと位置づけられています。

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甘いものが食べたい時の対処法

「●●が食べたい」と思った場合は、それぞれに原因があることがわかりました。ここからは再び「甘いもの」に戻って、どのように対処したらよいか考えてみます。

基本は「栄養バランスの整った食事」

和洋菓子をはじめさまざまな種類があるおいしいお菓子は、気をつけないと食べすぎてしまいがち。1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかを考える「食事バランスガイド」では、「菓子・嗜好飲料」はコマ本体ではなく「コマを回すヒモ」として表現されています。つまり、菓子・嗜好飲料は「食事の楽しみとして適度に摂ること」という位置づけなのです。

肥満や生活習慣病にならないよう、目安は1日あたり200kcalくらいまでとされています。これは、ショートケーキなら小1個、クッキーなら4枚程度、どら焼きや大福なら各1個で達してしまうカロリー量です。

甘いものはあくまで補完的な食べもので、基本は「栄養バランスの整った食事」ということを忘れないようにしたいですね。

「いま本当に甘いものが食べたいのか」の見極めを

とはいえ、生クリームがたっぷり載ったショートケーキやあんこがぎっしり詰まったどらやきなどの魅力に逆らうのは至難の業。見ているだけでも口に入れたときの甘美な味わいが容易に想像できてしまいますよね。

そんなときは香りのよいお茶やコーヒーを飲んで、ほんとうに甘いものが食べたいのかを自分に問い直すとよいでしょう。脳が欲しているエネルギーは、実は別の食べものからでも摂れるのではないでしょうか?

甘いものはゆっくり味わって満足感を高める

それでも食べたい気持ちが抑えられなかったり、あるいは我慢しすぎたりすると、逆にストレスになってしまうかもしれません。そのときはり一口ずつ、ゆっくり味わいながら食べることをお勧めします。お気に入りの店で買ったショートケーキ1個を2回に分けて食べても結果は同じことですよね。また、今日は甘いものをたくさん食べたのなら、明日は甘いものを控えるといった調節も有効なようです。

【B】【J】

 

 

甘いものに頼らない「ストレスコントロール術」

さまざまな外部の刺激(ストレッサー)に長期間さらされると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れます。そしてストレスを受けた心は、体に悪い影響を及ぼします。

甘いものを食べ過ぎないよう、甘いものにだけ頼らないよう、最後に「ストレスコントロール術」について考えてみます。

ストレスを軽くするための生活習慣

ストレスに対処するには、心と体の両方から考えることが必要です。まず心理面については、完璧主義をやめる、悲観的に考えない、人に相談してみるなどが挙げられます。

そして、身体面については、短時間でよいので自分の手を動かして何かに夢中になる時間をもつことが大事だといわれています。例えば、料理、ベランダ菜園など能動的な趣味をもつとよいとされています。

また、運動は、全身の血液の循環も促すうえストレスを発散できることもあって強く推奨されています。自分の好きな音楽を聴く、就寝前にぬるめの湯に浸かる、睡眠をしっかりとるようにするなど、リラックスタイムもしっかりつくりたいですね。

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時には甘いものでリラックスを

ストレスを軽くするには、ホッとする時間をつくることが大事だといわれています。その意味で、甘いものを食べてリラックスする時間をつくることは、ストレスの対処法としてけっして間違ってはいません。ただし、いつもいつも甘いものばかり食べていては心よりも体の方が先におかしくなってしまうでしょう。病気になったら元も子もありません。

バランスのよい食事とストレスを軽減する生活習慣を基本にしつつ、自分の内なる欲求に耳を傾けて、たまには甘いものを楽しんでリラックスする時間をもつようにする――そんな暮らしがよいのかもしれません。

 

 

 

<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書物等の一覧>

【A】早川幸男著『改訂2版 菓子入門』(日本食糧新聞社 2013)

【B】厚生労働省Web「健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~」お菓子や間食の取り入れ方

【C】独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖は安心な自然食品」

【D】独立行政法人 農畜産業振興機構Web「甘い砂糖の癒し効果」

【E】やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックWeb「ホルモンと神経伝達物質の違いとは? その影響と対策」

【F】櫻井 武著『食欲の化学――食べるだけでは満たされない絶妙で皮肉なしくみ』(講談社 2012)

【G】デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーブン・J・シンプソン著『食欲人』(サンマーク出版 2023)

【H】五関正江監修『ビタミン・ミネラルがよくわかる本――上手にとって健康に!』(つちや書店 2023)

【I】おいしい健康Web「読む、えいよう」

【J】農林水産省Web「実践食育ナビ」

【K】特定非営利活動法人 日本成人病予防協会Web「ストレスとうまく付き合う方法」

【L】ミツカン水の文化センター 機関誌『水の文化』51号 特集:水による心の回復力「日ごろ使わない神経を『水辺』が刺激する」

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