便秘と腸内細菌の関係について

便秘と腸内細菌の関係について

年齢や性別を問わず悩んでいる人が多い「便秘」。

便秘になってしまう原因は様々ですが、食生活だけでなく大腸内に生息している腸内細菌が便秘に関係している可能性があることを知っていますか?

今回は、便秘と腸内細菌の関係性について解説します。

  1. 健康な生活と便秘の関係について
  2. 便秘の種類と食物繊維について
  3. 大腸内の腸内細菌の状態が便秘を引き起こす可能性
  4. 善玉菌のエサになる発酵性食物繊維
  5. その他の便秘の解消方法
  6. まとめ

健康な生活と便秘の関係について

皆さんは便秘に悩んだことはありますか?

健康的な生活を送るためには快食、快眠、快便の三原則が基本条件ともいわれているので、便秘の悩みは早く解消したい体の状態の一つです。1)

ある研究では慢性便秘症の人はそうでない人よりも生存率が低くなる可能性があることや、心血管疾患や腎疾患の発症リスクが高くなる可能性があることが示唆されています。1)2)

また、動物モデルを用いた研究では、腸内細菌のバランスが崩れることで、便秘が引き起こされることが報告されており、腸内細菌のケアが便秘改善につながるのではないかと注目されています。3)

健康な生活と便秘の関係について

便秘の種類と食物繊維について

便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症(日本消化管学会編集)によると、ひとくちに便秘症といっても一次性と二次性に分けられ、一次性は機能性消化管疾患によるものと非狭窄性器質性便秘症に分けられます。機能性消化管疾患のなかでも機能性便秘症(これが一般的な慢性便秘症)は3つに分類され、大腸通過正常型、大腸通過遅延型、機能性便排出障害とされます。

便が大腸内を通過する時間が正常にもかかわらず排便回数や排便量が少ない、「大腸通過正常型便秘症」と呼ばれる便秘症は日常の食事が原因で発症することが多いと考えられています。

その食事に足りていない栄養素は食物繊維。食物繊維の摂取量不足は慢性便秘症の原因の一つとも言われています。4)

食物繊維摂取量は日本人の食事摂取基準(2020年版)にて摂取目標量は、18〜64歳の男性で1日あたり21g以上、18〜64歳の女性で1日あたり18g以上とされていますが、現代人は全く足りていないのが現実です。5)

便秘対策としても食物繊維は普段の食事にとりいれていきたいですね。

では、最近注目されている腸内細菌が便秘の原因の可能性があるとはどのようなことなのでしょうか。

大腸内の腸内細菌の状態が便秘を引き起こす可能性

人の大腸内には多くの腸内細菌が生息しており、からだによい働きをする有用菌(通称、善玉菌)、悪い働きをする有害菌(通称、悪玉菌)、どちらにも属さない日和見菌の3つのグループがバランスを保っていることで健康状態が保たれていると知られています。

ある動物モデルを用いた研究では、脂質や果糖と呼ばれる糖類の多い食事を摂取し続けると腸内細菌のバランスが崩れ、便秘が引き起こされることが報告されています。6)

別の動物モデルを用いた研究では、食生活の乱れなどにより、腸内細菌のバランスが崩れることで、便秘が引き起こされることだけでなく、悪玉菌の増殖や腸バリア機能の低下、免疫機能の低下にも繋がる可能性も報告されています。3)

では悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を増やすためにはどのようなことを意識するとよいでしょうか。

大腸内の腸内細菌の状態が便秘を引き起こす可能性

善玉菌のエサになる発酵性食物繊維

大腸の中にいる善玉菌は人が摂取した栄養素をエサとして食べてエネルギー源にしていることが知られています。

人の胃や小腸で分解・吸収されずに大腸に辿り着く食物繊維の中でも、エサになりやすい“発酵性食物繊維”。

善玉菌は発酵性食物繊維を食べることで短鎖脂肪酸という成分を生み出します。短鎖脂肪酸は、悪玉菌の増殖を抑えるだけでなく、腸のぜん動運動を活発にしたり、腸バリア機能を助けるなど様々な機能が報告されています。7)8)

この短鎖脂肪酸は、便秘との関係性も報告されており、健康な人に比べて、便秘症の人における便中の短鎖脂肪酸濃度が低いことから、短鎖脂肪酸は便秘と関係があるのではないかと注目されています。9)

※当サイト参照:発酵性食物繊維とは?

※当サイト参照:善玉菌とは?

善玉菌のエサになる発酵性食物繊維

その他の便秘の解消方法

ここまでは、食物繊維、特に善玉菌のエサになる発酵性食物繊維摂取による便秘改善について紹介しましたが、それ以外にも水分の摂取適度な運動も便秘には有効です。水分を十分にとることで、便が柔らかくなり排便しやすくなるといわれています。

また、適度な運動をすることで、腸の動きが促されます。10)

まとめ

便秘に悩む人は年々増加し、日本人の約3割が便秘に悩んでいると言われています。1)10)11)

便秘は単にスッキリできないということだけではなく長く健康に生きることに関係していることが分かってきています。

また、腸内細菌の状態も便秘に影響することが分かってきているので、便秘と腸内細菌、健康に生きることは密接な関係があります。

その解決策の一つが善玉菌のエサになる発酵性食物繊維。

発酵性食物繊維を毎日の食生活にとり入れ、善玉菌を元気にすることで、便秘の悩みを解消していきたいですね。

執筆ミツカン編集部

<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書籍等の一覧>

1) 便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症(日本消化管学会編集)南江堂 2023, 1-144.
2) Chang JY, et al. Impact of functional gastrointestinal disorders on survival in the community. Am J Gastroenterol 105 : 822―832, 2010.
3) Ruibiao Fu, et al. The mechanism of intestinal flora dysregulation mediated by intestinal bacterial biofilm to induce constipation BIOENGINEERED 2021, VOL. 12, NO. 1, 6484–6498
4) 慢性便秘症診療ガイドライン2017. 眞部紀明, 春間賢. 日本内科学会雑誌, 109, 254-259, 2020
5) 日本人の食事摂取基準(2020年版). 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会. 第一出版, 2020
6) Rong Tan, et al. Intestinal Microbiota Mediates High-Fructose and High-Fat Diets to Induce Chronic Intestinal Inflammation. Front. Cell. Infect. Microbiol., 16 June 2021 Sec. Microbiome in Health and Disease Volume 11 – 2021
7) Hidenori Shimizu et al. Regulation of host energy metabolism by gut microbiota-derived short-chain fatty acids, Glycative Stress Research 2019; 6 (3): 181-191
8) 腸内細菌と健康 - e-ヘルスネット - 厚生労働省
9) Xiong, R.-G. et al. Health Benefits and Side Effects of Short-Chain Fatty Acids. Foods 2022, 11, 2863.
10) 便秘と食習慣 - e-ヘルスネット - 厚生労働省
11) Tamura A, et al. J Neurogastroenterol Motil. 22(4): 677-685, 2016.

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