腸内環境の改善に効果的な方法とは?おすすめの食べ物を解説
「腸活」「腸内細菌」「腸は第二の脳」など、近年注目が高まってきている「腸」。
日々、腸の中で何が起きているのか、腸を整えることのメリットやその方法について紹介していきます。
そもそも腸内環境とは何?
人の腸管、主に大腸には約1,000種類・40兆個もの腸内細菌が生息していると言われています。1)
「腸内細菌叢」「腸内フローラ」などと呼ばれるこの細菌群は、構成する細菌の種類や数が変化し続けていて、そのバランスが「腸内環境」、つまり腸の健康状態に大きく関わっていることが近年の研究でわかってきています。
腸内環境を改善するメリット
腸内細菌は、私たちの体によい働きをする「善玉菌」、数が増えすぎると体によくない働きをする「悪玉菌」、そのどちらでもない「日和見菌」の3種類に大別されます。1)
善玉菌が増えて腸内環境がよくなることで、どんなメリットが生まれるのでしょうか?
便秘をやわらげる
胃から運ばれてきた食べ物を送り出す「蠕動運動」など、腸の動きを活発にし、便秘症状をやわらげてくれます。2)
免疫機能が高まる
善玉菌の構成成分により、身体全体の免疫機能が高まることがわかっています。また、腸の動きが活発になることで、食中毒菌などに感染しにくくなると言われています。1)
肥満や糖尿病になりにくい体質に
「生活習慣病」という名の通り、これまで肥満や糖尿病は、食べ過ぎや運動不足など生活習慣の乱れが主な原因だと考えられてきましたが、腸内環境の改善が抑制につながる可能性があることがわかってきました。1)
その他にも、アレルギーやアトピー、関節リウマチなどの免疫疾患、アルツハイマーやうつ病などの脳神経疾患など、腸とは関係が薄そうに思えるさまざまな疾患と腸内環境の関連性が報告されています。2)
善玉菌についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひチェックしてみてください。
腸内環境の改善におすすめの食べ物10選
食事により腸内環境を改善する、つまり善玉菌を増やす方法は大きく2つ。
1つ目は、ビフィズス菌や乳酸機などの善玉菌が生きている状態「プロバイオティクス」として摂取し、直接的に数を増やすこと。1)
2つ目は、食物繊維やオリゴ糖など善玉菌を増やす働きをする「プレバイオティクス」を摂取し、腸内の善玉菌の活動を活発化することです。1)
どのような食品があるのか、詳しく見ていきましょう。
ヨーグルト
善玉菌の1つ、乳酸菌が豊富な食品の代表格で、ビフィズス菌を含んでいるものもあります。3)4)
かける、和えるなど、他の食品とも組み合わせやすく、普段の食事に取り入れやすい点もおすすめです。
チーズ
同じ乳製品のチーズもまた、乳酸菌を多く含む食品で、発酵度合いの高いパルメザンチーズやカマンベールチーズは特に豊富です。3)4)
キムチ
豊富な乳酸菌だけでなく、野菜の食物繊維も摂取できるすぐれもの。3)4)
辛過ぎるものは胃腸への刺激が強いので、食べ過ぎ注意です。
ぬか漬け
キムチ同様、乳酸菌も食物繊維も摂取できる昔ながらの日本の味。3)4)5)
少しハードルが高いかもしれませんが、自宅で漬けることができれば、塩分の摂り過ぎも避けられそうですね。
ごぼう
豊富に含まれる「イヌリン」という食物繊維は、善玉菌を活発化させるだけでなく、水に溶けて腸内にとどまることで空腹感を抑える働きもしてくれるため、ダイエットにもおすすめです。3)
海藻類
全般に「アルギン酸」という食物繊維が豊富な海藻類。3)
大部分が乾物として売られていて長期保存ができるので、普段の食事に手軽に取り入れられます。
穀類
オーツ麦や玄米、大麦、全粒小麦なども、食物繊維を多く含んでいます。3)
白米を玄米に、パンやパスタを全粒粉のものに変えるなど、ちょっとした工夫で摂取量を増やすことができますよ。
甘酒
夏バテ対策で近年注目されている甘酒には、オリゴ糖、食物繊維のような働きをする成分が豊富に含まれています。3)6)
ただし、糖質も高めなのでカロリーが気になる方は飲み過ぎに注意してくださいね。3)
果物
キウイやみかん、プルーンは食物繊維が豊富です。3)
また、バナナはオリゴ糖を多く含み、食物繊維と似た働きをするデンプン「レジスタントスターチ」も、特に未完熟のものに多く含まれています。1)3)7)
そのままでももちろん、乳酸菌が豊富なヨーグルトと組み合わせれば効果抜群ですね。
食べもの以外で腸内環境を改善する方法
ここまでは、食事と腸内環境の関係について紹介してきましたが、実は食事以外にも腸内環境にプラスになる習慣があること、ご存知でしょうか?
十分な睡眠と規則的な生活を
不規則な生活は悪玉菌を増やす原因になると考えられていて、ある研究では、睡眠時間が短くなることで腸内細菌のバランスが崩れてしまうという結果が出ています。8)
夜はしっかりと眠り、朝起きたら食事を摂ってスタートする。規則正しい毎日で、腸内を健康に保ちましょう。
規則正しい生活と朝ごはんの関係が気になる方は、こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。
日常的に適度な運動を
また、運動と腸内細菌の関係性の研究からは、アスリートの運動強度と腸内細菌の種類の豊富さ(=多様性)に正の相関関係があったという報告があがっています。9)
運動をする時間が取れなくても、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、最寄り駅の1つ手前で降りて歩くなど、ちょっとした工夫で体を動かす機会を増やすことはできます。
腸内環境改善のため、取り組んでみてはいかがでしょう?
善玉菌のエネルギー「発酵性食物繊維」を知っていますか?
本コラムでは、「食物繊維」の中でも今特に注目を集めている「発酵性食物繊維」についても解説しています。
他の食物繊維との違いや腸内環境改善における働きなど、発酵性食物繊維の概要がわかりやすくまとまっています。
腸内環境改善を始めてみようと思っている方は、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
私たちの腸内で何が起きていて、それが身体もどのような変化をもたらすか、腸内の健康がいかに大切か、お分かりいただけたかと思います。
これから明らかになってくることも多い、腸内環境と健康との関係性。本コラムでも発信を続けていきますので、引き続きチェックしてみてくださいね。
<執筆に利用した学術論文、総説・解説、書籍等の一覧>
1) 腸内細菌と健康 - eヘルスネット- 厚生労働省
2) 細見 晃司、國澤 純:食と腸内細菌が織りなす腸内代謝環境の構築と健康への影響 Journal of Japanese Biochemical Society 95(4): 450-456 (2023)
3) 日本食品標準成分表2020年版(八訂) - 文部科学省
4) 乳酸菌 -eヘルスネット- 厚生労働省
5) 阪本 直茂、中山 二郎:糠床のミクロフローラと乳酸菌の共生 生物工学 第89巻 2011年 第8号
6) 住吉 和子、中尾 美幸:便秘に対する甘酒摂取の効果 Japanese Journal of Nursing Art and Science Vol.16, pp 36-40, 2017
7) 髙橋 希実、島田 良子、吉村 美紀:グリーンバナナデンプン混合焼成菓子の加水量とレジスタントスターチ量の関連性 2024年度大会(一社)日本調理科学会
8) 入江 潤一郎、伊藤 裕:睡眠と腸内細菌叢 腸内細菌学雑誌 31 : 143-150,2017
9) 森田 英利:運動と腸内細菌叢 腸内細菌学雑誌 34 : 13-18,2020